全国美術館会議について
会長あいさつ
ごあいさつ
このところ感染者数は山を越え(11月1日現在)、多くの美術館では十分な対策を講じながら通常の活動を再開させていますが、次の波の到来も予測されており、まだまだ気を許せるような状況ではありません。
最も災い転じて福となすということばもあります。コロナ禍への対応は、考えようによっては、美術館の活動に新たな局面を切り開く契機ともなったといえなくはないでしょう。各館が取り組まざるを得なかったオンラインによる情報発信やコミュニケーションは、結果としてデジタルメディアに対するリテラシーを大いに進展させ、むしろ美術館におけるオンライン時代の始まりを告げることにもなったのです。劇場やコンサートホールと同様にあくまでもリアルな世界の砦であると思われていた美術館に、補助的な手段としてではあるにせよ、バーチャルな鑑賞体験の方法が導入されるようになり、またアーティスト自身による作品解説やアトリエ訪問、国境を越えたシンポジウムなども容易に実現できるというオンラインならではのメリットも注目されています。
もちろん美術作品をギャラリーに身を置いて鑑賞するという美術館の第一義的な役割は他の手段に置き変えられることはないはずです。その意味では今ようやく展覧会の本来の姿を取り戻しつつあるのは私たちにとって何よりも喜ばしいことであるに違いありません。
ここで全美にとって大変うれしいニュースをお伝えしましょう。この11月3日に石巻市博物館が開館します。東日本大震災により甚大な被害を被った旧石巻文化センターの美術作品を受け継いで再生する博物館ですが、全美も文化財レスキュー事業として被災した作品の救出や修復の一部を担ってきました。震災から10年以上もの間、懸命に努力してこられた石巻市博物館が、修復された作品を中心にした展覧会で出発することを心より歓迎したいと思います。
さて皆さまもご存じのように、まさにコロナ禍の最中に全美は社団法人化し、東京の千代田区一番町に独立した事務所を構えました。長年の念願であった法人体制のもとで、来年の6月には山梨県立美術館をホスト館にしてリアルな総会を開催することができそうです。3年ぶりにフェース・トゥ・フェースで再会できる日を心待ちにしています。コロナ禍の行方は予断を許しませんが、皆様もくれぐれも健康にご留意ください。
2021年11月1日
一般社団法人全国美術館会議 会長 建畠 晢(埼玉県立近代美術館長)