会長あいさつ

ごあいさつ

 去る6月6日、弘前で開催された全国美術館会議理事会で会長に選出されました。前任の建畠会長は、11年の長きにわたってこの重責を務められ、その間に社団法人化や財政健全化、美術館の原則と美術館関係者の行動指針の策定、被災地の文化財レスキュー等々の困難な課題に先頭に立って取り組んでこられました。その労に対して、心からの謝意と敬意を表します。
 今や400館を超える会員館を擁する全国美術館会議は、日本の美術館界を代表する組織であり、その存在意義は年々大きくなりつつあります。
 一方で日本の美術館を取り巻く環境は厳しさを増し、美術館職員の労働環境も万全のものとは言えない状況にあります。予算の削減と諸物価の高騰などにより、展覧会や作品収集をはじめとする美術館の活動が大きな制約を受け、調査研究や収集保存、教育普及といった美術館の基本的な使命を遂行するのに困難を覚えている美術館も少なくないことでしょう。
 全国美術館会議が個々の美術館が抱える問題を解決することはもちろん出来ませんが、学芸員や職員が館の垣根を超えて日頃の研究や実践の成果を共有し、自由に意見交換が出来る交流の場を設けることは、この組織の大きな役割であり、存在意義もそこにあると思います。全国美術館会議は、こうした場を通じて各美術館の活動に何らかの寄与が出来るものと信じています。
 その機会を継続して提供し、より活発な活動を促すためにも、財政の健全化は急務であり、当面の大きな課題であると考えています。もちろん他にも、今も継続中の文化財レスキューの活動や、事務局体制の将来的な安定化など取り組むべき課題は少なくありません。
 微力ながらもこうした諸課題の解決に向けて、誠心誠意取り組む所存です。美術館で働く職員が希望を持って仕事ができるような環境作りに、いささかなりとも資するような活動を続けていくことが全国美術館会議の使命であり、その遂行をサポートすることが会長の責務であると考えます。そのためには皆さまのお力添えが欠かせません。全国美術館会議の諸活動への積極的なご参加をお願いする次第です。

  2024年7月12日

一般社団法人全国美術館会議 会長 冨田 章(東京ステーションギャラリー館長)
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