学芸員研修会報告書

日時
2019年3月22日
場所
東京国立近代美術館
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園1-1
主催
全国美術館会議 担当:情報・資料研究部会

第33回学芸員研修会

テーマ:「美術館のアーカイブズ資料の可視化とさらなる活用に向けて」
日 時:2019年3月22日(金)13:00~17:30
会 場:東京国立近代美術館 講堂
主 催:全国美術館会議 情報・資料研究部会

開催趣旨

 多くの美術館には、作家や美術関係者等から受け入れた、美術作品とも図書資料とも呼び難い資料が存在するのではないでしょうか。日記や手稿類、書簡、作品以外の写真・映像資料、イベント告知用の稀少な一過性印刷物、プロジェクト等に関する指示書、作品との境目の曖昧なスケッチやメモの断片等々が、それらの代表的なものです。いずれの資料も重要な一次情報を含んでいる可能性があり、美術に関わりのある個人・組織の活動記録だという点において、“アーカイブズ資料”と捉えることができるものです。しかし、日本の美術館におけるそれらの資料の扱いは、「準作品」として所蔵登録されたり、「準図書」として蔵書登録されたり、館内の職員しかその存在を知らないままひっそり保管されたりと、カテゴライズが曖昧で一定しません。その結果、美術館外の研究者等がそれらの資料の存在や概要を知ることは困難になり、とりわけ日本の美術館に伝手のない学生や海外の研究者にとってはほぼアクセス不能になっているのが現状です。
 研究環境がグローバル化し、日本美術の資料調査を行う海外の研究者も増加している昨今、上述のような状況は改善すべきではないでしょうか。そのような問題意識から情報・資料研究部会では、来年度以降、全国美術館会議会員館の所蔵資料を対象とした「美術関係アーカイブズ資料所在調査」を開始し、資料の所在情報の可視化、共有化を目指すことにしました。
 本研修会の目的は、この「美術関係アーカイブズ資料所在調査」の趣旨や方法をご紹介し、参加館の皆様にご理解、ご協力を仰ぐことにあります。第1部では、複数の美術館が所蔵するさまざまなタイプの資料の事例をとりあげ、受入れ経緯、内容と規模、活用実態、外部研究者のアクセス方法等に関する紹介を行います。続く第2部では、まず、海外の先進的な美術アーカイブズの事例紹介を通じ、日本の美術館にも参考にできる部分がないかを探ります。また、乏しい人員・予算といった日本の美術館の現実を踏まえ、最低限の手順で資料の所在情報を公開する手法の提案を行うとともに、「美術関係アーカイブズ資料所在調査」のビジョンと方法を説明します。第3部のパネルディスカッションでは、会場の皆様からの質問やご意見をいただきながら、日本の美術館のアーカイブズをとりまくさまざまな問題点、可能性を論議したいと思います。
 本研修会への皆様のご参加をお待ちしております。

プログラム

10:30~11:30 東京国立近代美術館アートライブラリ見学(希望者のみ)
11:30~13:00 「福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ」
         見学(希望者のみ)
12:00~13:00 受付
13:00~13:05 開会・開会挨拶/神代 浩(東京国立近代美術館館長)
13:05~13:30 趣旨説明/鴨木年泰(東京富士美術館、情報・資料研究部会幹事)
13:30~14:45 第1部 美術館が所蔵するさまざまなアーカイブズ資料
         ・洲之内徹関係資料について/土生和彦(宮城県美術館)
         ・東京国立近代美術館のアーカイブズ資料と夢土画廊資料について/
                       長名大地(東京国立近代美術館)
         ・具体美術協会に関する資料群の情報化/
                       松山ひとみ(大阪中之島美術館準備室)
         ・東京都美術館 ミュージアムアーカイブズ─機関アーカイブズとしての
           一試行/          水田有子氏(東京都歴史文化財団)
14:45~15:00 休 憩
15:00~16:00 第2部 アーカイブズ資料の活用と方法
         ・海外事例に学ぶ美術アーカイブズ検索手段のあり方/
                       川口雅子(国立西洋美術館)
         ・“資料群”としての整理・記述方法と所在情報の発信―「アーカイブズ資料
          所在調査」の実施に向けて/谷口英理(国立新美術館)
16:00~ パネルディスカッション/進行 鴨木年泰
17:30  クロージング/越智裕二郎(西宮市大谷記念美術館館長/
                       情報・資料研究部会部会長)
18:00~ 情報交換会
Copyright © 2011 The Japanese Council of Art Museums All Rights Reserved.