第60回保存研究部会会合報告
内 容
12月18日(水)1日目
14:20~14:25 開会挨拶 木本文平部会長/碧南市藤井達吉現代美術館
14:10~15:30 協議、連絡事項
1. 指定品の展示公開日数について
前回の会合でも情報共有しましたが、「国宝・重要文化財の展示公開日数」について近年運用が厳密化し、
文化庁によって定められた公開日数に自館での展示日数がカウントされるようになったと、6月の全美社員総
会で会員館より問題提起がありました。部会合参加者の所属館でも指定品を所蔵している館があり、各館の
運用状況について情報共有しました。
2. 次期幹事について
今年度より幹事体制の輪番制を開始し、東日本/西日本地域から、それぞれ事務幹事と企画幹事を各1名
ずつ、計4名で幹事を担当します。今回の話合いでは、2026(令和8)年度の東日本事務幹事を宇都宮美・黒木
さん、2028(令和10)年度の東日本事務幹事を平塚市美の安部さん・鈴木さんに検討をお願いしています。
因みに、来年2025(令和7)年度は、事務幹事(東日本)千葉県美・神野さん、(西日本)広島県美・岡地さん、
企画幹事(東日本)西美・邊牟木、(西日本)国立国際美・小川です。
現在の幹事決定方法は、部会合出席者且つ未経験者
から選別しているため、部会合に出席していない・できな
い未経験者にいかに幹事を担ってもらうかが今後の課
題です。
3. エキヒュームSの製造終了について
燻蒸ガス「エキヒュームS®」が今年度いっぱいで販売終
了と発表されたことを受け、前回の第59回部会合で各館
の今後の燻蒸方法や虫カビ対策について意見交換を行
いました。
その際、十分な時間が取れず、また、部会員全員が出席し
ていたわけではなかったため、会合終了後の2024年9月
の1か月間でMicrosoft Formsを使用して広く部会員からアンケートを取り、取りまとめたアンケート結果を
今回の部会合で共有しました。回答のあった館で今回の部会合出席者にはもう少し詳細な説明をしてもら
ったり、新規入会館の出席者には口頭で現状や今後の方針を話してもらったりして、皆で情報や問題の共有
を行いました。結果は、問題発生時のみ、または、新規作品収蔵時にのみ燻蒸を行っている館が多くを占める
中、虫・カビの発生有無にかかわらず定期的にガス燻蒸を行っている館もありましたが他の燻蒸方法を検討
する一方、文化財IPMを強化することを検討している館が多いという結果が出ました。
4. お知らせ:今年度残りの予定
(1) 名簿改定・配布(12月末)
(2) 部会員継続意思アンケート(2月頃)→名簿改定・配布(3月末)
(3) 事務幹事引継ぎ(3月末)
5. その他、連絡事項
(1) 報告:災害対策HPリニューアル(事務幹事・小川より)
11月26日に開催された部会幹事会時に各部会に再度アナウンスを行うように通達があった件です。昨
年度~今年度にかけて災害対策委員会が全美ウェブサイトの災害対策ホームページを改定したことをお
知らせしました。災害対策に役立つ情報が判りやすく、且つ、検索しやすく掲載されているので、平常時に一
読し、各館の備えをするよう呼びかけました。
(2) 報告:能登半島の被災文化財レスキュー参加(事務幹事・小川より)
事務幹事であり、災害対策委員でもある国際美・小川より、11月24日(日)~27日(水)まで能登被災文
化財レスキュー作業に参加した際の様子を伝えてもらいました。国立文化財機構文化財防災センターが作
業を取りまとめており、現在行っている作業は、解体を待つ寺社・個人宅・蔵などから一時保管庫へ資料を
梱包して移送する一時避難作業のみで、緊急処置を含む保存修復作業は行っていません。対象作品は美術
館のような公共施設の所蔵品ではなく、個人が所蔵する文書や美術品、民俗資料などが中心です。基本は
週5日間の連続作業であり、作業環境は当初よりかなり改善されています。
(3) お知らせ:川崎と能登の文化財レスキュー活動継続(事務局・小林より)
能登被災文化財レスキュー参加時のボランティア保険については、文化財防災センターがアレンジして
くださいます。また、交通・宿泊費を含む旅費、日当が出ますので、参加費用の心配はありません。全美では
1月以降も継続して川崎と能登の被災文化財レスキュー作業を支援する予定ですので、仕事のご都合のつ
く方は、是非ご参加ください。
16:20~17:30 バックヤードツアー
企画幹事・根本さん、盛本さん、岩手県立美術館・濱淵
さんのご案内で、バックヤードを見学させていただきまし
た。いくつもの収蔵庫とその前室、写真室、展示具倉倉庫、
トラックヤードを見学しました。皆が驚嘆したのが、充実
したスペース、整理整頓された様子とその清潔さです。
所蔵作品を収納する収蔵庫だけでなく、展示ケースや展
示台等を収納する充実したスペースを拝見し、ただただ
羨望の眼差しで見つめるだけでした。それ以上に驚いた
のが、全ての場所の清潔さです。どこにも埃一つ落ちてお
らず、月一度の定期的な清掃作業が功を奏していまし
た。また、どこの部屋を拝見しても整理の行き届いた様子に感心すると共に、各自の所属館のバックヤードの
現状に反省の声を出す者が続出するほどでした。
14:20~14:25 開会挨拶 木本文平部会長/碧南市藤井達吉現代美術館
14:10~15:30 協議、連絡事項
1. 指定品の展示公開日数について
前回の会合でも情報共有しましたが、「国宝・重要文化財の展示公開日数」について近年運用が厳密化し、
文化庁によって定められた公開日数に自館での展示日数がカウントされるようになったと、6月の全美社員総
会で会員館より問題提起がありました。部会合参加者の所属館でも指定品を所蔵している館があり、各館の
運用状況について情報共有しました。
2. 次期幹事について
今年度より幹事体制の輪番制を開始し、東日本/西日本地域から、それぞれ事務幹事と企画幹事を各1名
ずつ、計4名で幹事を担当します。今回の話合いでは、2026(令和8)年度の東日本事務幹事を宇都宮美・黒木
さん、2028(令和10)年度の東日本事務幹事を平塚市美の安部さん・鈴木さんに検討をお願いしています。
因みに、来年2025(令和7)年度は、事務幹事(東日本)千葉県美・神野さん、(西日本)広島県美・岡地さん、
企画幹事(東日本)西美・邊牟木、(西日本)国立国際美・小川です。

現在の幹事決定方法は、部会合出席者且つ未経験者
から選別しているため、部会合に出席していない・できな
い未経験者にいかに幹事を担ってもらうかが今後の課
題です。
3. エキヒュームSの製造終了について
燻蒸ガス「エキヒュームS®」が今年度いっぱいで販売終
了と発表されたことを受け、前回の第59回部会合で各館
の今後の燻蒸方法や虫カビ対策について意見交換を行
いました。
その際、十分な時間が取れず、また、部会員全員が出席し
ていたわけではなかったため、会合終了後の2024年9月
の1か月間でMicrosoft Formsを使用して広く部会員からアンケートを取り、取りまとめたアンケート結果を
今回の部会合で共有しました。回答のあった館で今回の部会合出席者にはもう少し詳細な説明をしてもら
ったり、新規入会館の出席者には口頭で現状や今後の方針を話してもらったりして、皆で情報や問題の共有
を行いました。結果は、問題発生時のみ、または、新規作品収蔵時にのみ燻蒸を行っている館が多くを占める
中、虫・カビの発生有無にかかわらず定期的にガス燻蒸を行っている館もありましたが他の燻蒸方法を検討
する一方、文化財IPMを強化することを検討している館が多いという結果が出ました。
4. お知らせ:今年度残りの予定
(1) 名簿改定・配布(12月末)
(2) 部会員継続意思アンケート(2月頃)→名簿改定・配布(3月末)
(3) 事務幹事引継ぎ(3月末)
5. その他、連絡事項
(1) 報告:災害対策HPリニューアル(事務幹事・小川より)
11月26日に開催された部会幹事会時に各部会に再度アナウンスを行うように通達があった件です。昨
年度~今年度にかけて災害対策委員会が全美ウェブサイトの災害対策ホームページを改定したことをお
知らせしました。災害対策に役立つ情報が判りやすく、且つ、検索しやすく掲載されているので、平常時に一
読し、各館の備えをするよう呼びかけました。
(2) 報告:能登半島の被災文化財レスキュー参加(事務幹事・小川より)
事務幹事であり、災害対策委員でもある国際美・小川より、11月24日(日)~27日(水)まで能登被災文
化財レスキュー作業に参加した際の様子を伝えてもらいました。国立文化財機構文化財防災センターが作
業を取りまとめており、現在行っている作業は、解体を待つ寺社・個人宅・蔵などから一時保管庫へ資料を
梱包して移送する一時避難作業のみで、緊急処置を含む保存修復作業は行っていません。対象作品は美術
館のような公共施設の所蔵品ではなく、個人が所蔵する文書や美術品、民俗資料などが中心です。基本は
週5日間の連続作業であり、作業環境は当初よりかなり改善されています。
(3) お知らせ:川崎と能登の文化財レスキュー活動継続(事務局・小林より)
能登被災文化財レスキュー参加時のボランティア保険については、文化財防災センターがアレンジして
くださいます。また、交通・宿泊費を含む旅費、日当が出ますので、参加費用の心配はありません。全美では
1月以降も継続して川崎と能登の被災文化財レスキュー作業を支援する予定ですので、仕事のご都合のつ
く方は、是非ご参加ください。
16:20~17:30 バックヤードツアー

企画幹事・根本さん、盛本さん、岩手県立美術館・濱淵
さんのご案内で、バックヤードを見学させていただきまし
た。いくつもの収蔵庫とその前室、写真室、展示具倉倉庫、
トラックヤードを見学しました。皆が驚嘆したのが、充実
したスペース、整理整頓された様子とその清潔さです。
所蔵作品を収納する収蔵庫だけでなく、展示ケースや展
示台等を収納する充実したスペースを拝見し、ただただ
羨望の眼差しで見つめるだけでした。それ以上に驚いた
のが、全ての場所の清潔さです。どこにも埃一つ落ちてお
らず、月一度の定期的な清掃作業が功を奏していまし
た。また、どこの部屋を拝見しても整理の行き届いた様子に感心すると共に、各自の所属館のバックヤードの
現状に反省の声を出す者が続出するほどでした。
12月19日(木)2日目
9:40~9:45 挨拶 藁谷収館長(岩手県立美術館)
9:45~10:25 講演①「ニュウハクシミの生態と防除対策」
講師:島田潤氏(東京文化財研究所 保存科学研究センター アソシエイトフェロー)
最初に、昆虫学がご専門の島田潤さんより、紙作品に被害を及ぼす文化財害虫であるシミ全般の話と、
2022年に日本でも新たに生息が確認されたシミの一種である「ニュウハクシミ」の特徴と防除方法につい
てご講演いただきました。他の種類のシミによる紙作品の食害は広く知られていましたが、日本ではシミの研
究があまり進んでいませんでした。2022年のニュウハクシミの生息確認以降、東京文化財研究所では生態の
研究をしています。セルロースを含む紙質のものや埃に含まれるたんぱく質を餌とし、暗い・狭い場所や湿度
が高く維持されている環境を好んでおり、特に段ボール・書類の隙間や建物の隙間に生息しています。移動の
しやすさと繁殖力が問題で、生息している場所の床に置いたカバンや段ボールに隙間に入り込んで移動が可
能であり、単為生殖の可能性が高いため、1匹でも持ち込むと繁殖してしまうという話をお聞きし、聴講者は
驚きを隠せませんでした。シミが発生した場合、薬剤で殺虫することを最初に考えがちですが、物理的防除や
温湿度環境の徹底管理を行うほか、徹底的な清掃により餌となる埃や虫の死骸を無くすことが一番の策で
あることを学びました。
10:30~11:10 講演②「燻蒸ガスの現状とこれからの資料保存の課題」
講師:佐藤嘉則氏(東京文化財研究所 保存科学研究センター 生物科学研究室長)
次に、微生物生態学がご専門の佐藤嘉則さんより、これまでのガス燻蒸処理と虫菌害対策、また今年度末
で販売が中止になるエキヒュームS®やガス燻蒸で使用される他の特徴と効果を説明いただきました。
基本的に虫発生の場合もカビ発生の場合も、施設をガス燻蒸しただけでは根本的な解決にはならず、環境
が戻れば再発します。そのため、今後の生物被害対策はガス燻蒸に頼らず、長期的な視野に立ち、発生源や
空気環境の調査や徹底した清掃を行い、温湿度環境を整えると同時に文化財IPMや定期的な除塵清掃した
方が効果的です。また、作品に生物被害がある場合には、
ガス燻蒸のほかに自分たちでも出来る数種類の殺虫方
法があることもお話いただきましたが、やはり生物被害
対策においても、ガス燻蒸は短期的な解決だけであり、
長期的には害虫が 発生しない環境づくりが必要です。
さらに、カビの危険性や安全なカビ払い方法についても
教えていただきました。
11:10~11:45 質疑応答
講演後の質疑応答では、段ボール箱の材質によるニュ
ウハクシミの発生有無、美術館職員が自分たちでできる
物理的防除方法に使用する材料・機材・方法について、沢
山の質問が出ました。講師お二人が所属する東京文化財研究所のウェブサイトでは、文化財害虫検索や対処
方法簡易的な虫害トラップの型紙と作成方法などを公開していることも情報共有していただきました。
11:45~11:50 閉会挨拶 木本文平部会長(碧南市藤井達吉現代美術館)
次回の保存研究部会第61回部会合は、国立西洋美術館で開催します。時期については、2025年4月~8月までに開催することを検討中です。
9:40~9:45 挨拶 藁谷収館長(岩手県立美術館)
9:45~10:25 講演①「ニュウハクシミの生態と防除対策」
講師:島田潤氏(東京文化財研究所 保存科学研究センター アソシエイトフェロー)
最初に、昆虫学がご専門の島田潤さんより、紙作品に被害を及ぼす文化財害虫であるシミ全般の話と、
2022年に日本でも新たに生息が確認されたシミの一種である「ニュウハクシミ」の特徴と防除方法につい
てご講演いただきました。他の種類のシミによる紙作品の食害は広く知られていましたが、日本ではシミの研
究があまり進んでいませんでした。2022年のニュウハクシミの生息確認以降、東京文化財研究所では生態の
研究をしています。セルロースを含む紙質のものや埃に含まれるたんぱく質を餌とし、暗い・狭い場所や湿度
が高く維持されている環境を好んでおり、特に段ボール・書類の隙間や建物の隙間に生息しています。移動の
しやすさと繁殖力が問題で、生息している場所の床に置いたカバンや段ボールに隙間に入り込んで移動が可
能であり、単為生殖の可能性が高いため、1匹でも持ち込むと繁殖してしまうという話をお聞きし、聴講者は
驚きを隠せませんでした。シミが発生した場合、薬剤で殺虫することを最初に考えがちですが、物理的防除や
温湿度環境の徹底管理を行うほか、徹底的な清掃により餌となる埃や虫の死骸を無くすことが一番の策で
あることを学びました。
10:30~11:10 講演②「燻蒸ガスの現状とこれからの資料保存の課題」
講師:佐藤嘉則氏(東京文化財研究所 保存科学研究センター 生物科学研究室長)
次に、微生物生態学がご専門の佐藤嘉則さんより、これまでのガス燻蒸処理と虫菌害対策、また今年度末
で販売が中止になるエキヒュームS®やガス燻蒸で使用される他の特徴と効果を説明いただきました。
基本的に虫発生の場合もカビ発生の場合も、施設をガス燻蒸しただけでは根本的な解決にはならず、環境
が戻れば再発します。そのため、今後の生物被害対策はガス燻蒸に頼らず、長期的な視野に立ち、発生源や
空気環境の調査や徹底した清掃を行い、温湿度環境を整えると同時に文化財IPMや定期的な除塵清掃した
方が効果的です。また、作品に生物被害がある場合には、

ガス燻蒸のほかに自分たちでも出来る数種類の殺虫方
法があることもお話いただきましたが、やはり生物被害
対策においても、ガス燻蒸は短期的な解決だけであり、
長期的には害虫が 発生しない環境づくりが必要です。
さらに、カビの危険性や安全なカビ払い方法についても
教えていただきました。
11:10~11:45 質疑応答
講演後の質疑応答では、段ボール箱の材質によるニュ
ウハクシミの発生有無、美術館職員が自分たちでできる
物理的防除方法に使用する材料・機材・方法について、沢
山の質問が出ました。講師お二人が所属する東京文化財研究所のウェブサイトでは、文化財害虫検索や対処
方法簡易的な虫害トラップの型紙と作成方法などを公開していることも情報共有していただきました。
11:45~11:50 閉会挨拶 木本文平部会長(碧南市藤井達吉現代美術館)
次回の保存研究部会第61回部会合は、国立西洋美術館で開催します。時期については、2025年4月~8月までに開催することを検討中です。
(報告者:国立西洋美術館 邊牟木尚美、国立国際美術館 小川絢子)
出席者
1日目:部会員20名、事務局1名、講師2名(バックヤードツアーから)
2日目:部会員20名、事務局1名、講師2名、オブザーバー4名
2日目:部会員20名、事務局1名、講師2名、オブザーバー4名