美術館運営研究部会

日時
2024年1月15日(月)
14:00~16:30
場所
国立新美術館
研修室C

第37回美術館運営研究部会会合報告

内 容

議題:1 学芸員聞き取り調査結果のまとめ、総括
   2 その他
   
 オンラインによる第36回会合(2022年12月)から1年余り間隔があき、2023年は会合を開かないままであったが、その間もメーリングリストを活用して活動は行っており、その成果が議題に挙げた「学芸員聞き取り調査結果」であった。「学芸員の現場における課題や今後望まれることについての調査」の実施を決めたことは第36回会合報告においても記したとおりである。
 2023年の春に7問から成る聞き取り調査項目を固めたのち、全国の国公私立館から数十館を選び春から夏にかけ、部会員のうち8名が分担して対面やメール等で聞き取りを実施した。その結果北海道から九州まで44館に所属する館員の中から回答を得ることができた。秋から年末にかけてその回答内容を7人で整理・分析し(一人が1問ずつ担当)、その結果を部会員で共有して意見交換をしたのが今回の会合であった。
 統計資料として見るにはサンプル数が少ないものの、ある程度現場の声を拾い上げることはできたのではないかと考えられる。その結果、例えば、学芸員という資格は必要だという意見が多数派である一方、それでは学芸員の専門性とは何かという点については認識や見解が一様ではないということが見られた。ある程度事前に予想できたことではあるが、やはり館の規模・職員数・設置主体の違いによって現状や課題が異なる点は大きい。
 会合の席上では、この結果を美術館運営研究部会からのレポートとしてどう発表するかということと、あわせてこの聞き取り調査の結果をどう生かしていくかについても話し合った。意識としては、全国美術館会議の会員に限定せず、美術館学芸員に関する課題を広く可視化して議論を誘発していくべきであろう、ということである。昨年施行された改正博物館法においても学芸員制度の見直しは今後の課題として棚上げのままであるが、いずれ動き始めるかもしれない。もしそうなった場合、美術館の現場にとって制度が改悪されないように現場からの発信に努めていくことが必要である。学芸員資格制度の根拠である博物館法はその名のとおり全分野の博物館を対象としているわけであり、必ずしも他分野の館では認識していないであろう美術館ならではの課題や現状について、美術館界の外へ向けて広げていくことも大切であろう。
 部会からのレポートについては、年度の切り替わりにかけて幹事を中心に完成へ向けた作業を進めることとなった。次回の部会会合日時は未定であるが、これまでどおりメーリングリストを活用して意見交換・統一をはかっていくつもりである。なお、聞き取り調査実施にあたり、館名や個人名を公表しない前提で率直な意見を回答いただいたので、最終レポートにおいてもその点は遵守することにしている。
 このレポート自体の発表は全国美術館会議ウェブサイト上になると思われるが、その発表をゴールとせず、そこから先の発信と提言については、会員以外の関係者も招いたシンポジウムの開催なども視野にいれている。
 冒頭に記したとおり、前回から一年以上経過した部会会合となったわけだが、今回は会合初参加となる部会員も3名あり、前回の報告でも課題に挙げたメンバー増強については嬉しい前進が見られたことを付け加えておきたい。言うまでもなく、今後も新規参加は歓迎しているので、入会をご検討いただければ幸いである。    
(文責:安田 篤生)

出席者:13名

浅野秀剛(部会長:大和文華館)
安田篤生(幹事:奈良県立美術館)
岡部信幸(山形美術館)
貝塚 健(石橋財団アーティゾン美術館)
逢坂恵理子(国立新美術館)
青木加苗(和歌山県立近代美術館)
不動美里(姫路市立美術館)
小林 公(兵庫県立美術館)
柳澤宏美(高知県立美術館)
大島徹也(多摩美術大学)
山梨俊夫(元・国立国際美術館)
山本成子(高岡市立博物館)
オブザーバー
小林豊子(事務局) 
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