地域美術研究部会

日時
2023年2月14日(火)
場所
大阪中之島美術館
ホール

第14回地域美術研究部会会合報告

 第14回会合は、大阪中之島美術館を会場に開催した。午前中は同館にて開催中であった展覧会「大阪の日本画」展を見学し、午後、定刻で部会合をスタートした。
 発表では、「大阪の日本画」展を企画された林野雅人氏(大阪中之島美術館)と、これまで20数年にわたり大阪の女性画家たちを調査し企画展を開催されてきた小川知子氏(大阪中之島美術館)に登壇いただいた。
 まず林野氏の発表「大阪の日本画の可能性」は、同館準備室時代からの歴代学芸員による収集作品と蓄積されてきた研究をベースに、大阪にゆかりのある絵画、特に幕末から戦後までの大阪で育まれた日本画に焦点をあてた展覧会として構成。発表は、展覧会の章立てに沿って、1.北野恒富とその門下、2.菅楯彦、生田花朝、3.矢野橋村と新南画の作家、4.文人画と大阪の中国趣味、5.船場派、6.女性画家たち、の6つの視点から大阪の近代絵画史を紐解いていった。特に、大阪船場の旦那衆に好まれた四条派を指して、新たに「船場派」と提示された見解は興味深かった。いわゆる一般的な美術史の見方では零れてしまう作品や作家たちの存在に光を当て検証されていた。商都大阪の経済力を背景にした旦那文化と、成功を求めて全国から集まった画家たちの活動、また画家たちに手ほどきを受けた大阪の女性画家たちの活躍や画塾の存在など、近代の公募展や団体を中心とした一般的な美術史の視点だけでなく、近代大阪の絵画史を多角的な視点から検証した意欲的な企画であった。
 次に、小川氏より「予告『女性画家たちの大阪』展について」と題して発表いただいた。小川氏は準備室時代の「美術都市大阪の発見」展(1997年)から大阪の美術の企画に関わり、その後、島成園の遺族との出会いをきっかけに、大阪の女性日本画家たちについての調査を開始された。2006年、「島成園と浪華の女性画家」展を大阪高島屋にて開催。同展をきっかけに多くの女性画家の遺族と出会うことができたことで、さらなる調査研究と作品収集に結び付く。2008年には「女性画家の大阪―美人画と前衛の20世紀」展を開催。美術館関係者にも注目され手応えを感じられたという。
 この2008年開催の展覧会の拡大版として、2023年冬に「決定版 女性画家たちの大阪」展を開催される。同展を長きにわたる研究成果の卒業レポートとしたい、と締め括られた。
 質疑では、長い準備室時代からの成果への労いの声が上がった。そのほか、大阪の美術教育や、京都画壇との違いについての質問など活発な意見交換が行われた。
 会の後半では、部会の今後の活動について話し合い、今後の開催地と発表者について部会員からも自薦他薦を問わず提案を求めた。
(北九州市立美術館 重松知美)

出席者:17名(部会員13名、オブザーバー1名、事務局1名、発表者2名)

部会長:速水豊(三重県立美術館長)
幹事:藤崎綾(広島県立美術館)
幹事:増渕鏡子(福島県立美術館)
幹事:迫内祐司(小杉放菴記念日光美術館)
幹事:重松知美(北九州市立美術館)
折井貴恵(川越市立美術館)
原舞子(三重県立美術館)
植田彩芳子(京都府立京都文化博物館)
藤本真名美(和歌山県立近代美術館)
菅谷富夫(大阪中之島美術館長)
野村英子(勝央美術文学館)
一柳友子(香川県立ミュージアム・東山魁夷せとうち美術館)
山梨俊夫(全国美術館会議事務局)
オブザーバー:
戸張泰子(台東区立朝倉彫塑館)
小林豊子(全国美術館会議事務局)
発表者:
林野雅人(大阪中之島美術館)
小川知子(大阪中之島美術館)
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