地域美術研究部会

日時
2018年11月15日(木) ~2018年11月16日(金)
場所
和歌山県立近代美術館、兵庫県立美術館

第9回地域美術研究部会会合報告

 第9回会合は、11月15日~16日に、近畿ブロックの和歌山県立近代美術館と兵庫県立美術館で開催された。
 1日目は、和歌山県立近代美術館の奥村一郎氏から「和歌山県立近代美術館のコレクションと石垣栄太郎」と題した発表があった。同館は、前身の和歌山県立美術館(1963年開館)から作品83点を引き継ぎ、全国で5番目の「近代」美術館として1970年に開館。以後、「郷土作家シリーズ」ともいえる和歌山県ゆかり作家の顕彰を中心とした自主企画展や、昭和50年代以降は、関西の現代美術家を中心に取り上げる「関西の美術家シリーズ」また「和歌山版画ビエンナーレ」などを実施。各種の自主企画展の開催と作品・資料の収集を連動させ、郷土の美術や戦後美術、版画コレクション等を充実させてきた。発表では、旧館時代からの顕彰に引き続き、郷土の主要作家として奥村氏も2013年に回顧展を手がけた石垣栄太郎を取り上げ、石垣や国吉康雄らによる画彫会(1922年設立)の活動や邦人美術展など、長年の調査研究を踏まえて石垣の活動が紹介された。収蔵庫では、近年発見された石垣作品とともに清水登之≪ヨコハマ・ナイト≫を実見。調査や記録写真をもとに横浜美術館所蔵の≪ヨコハマ・ナイト≫との比較分析がなされ、参加者からも活発な意見が出された。また、特別展「創立100周年記念 国画創作協会の全貌」展を藤本真名美氏の、ついで関連企画「特集:国展の版画」を宮本久宣氏の解説を受けつつ鑑賞。コレクションの厚みと研究成果を実感する展示であった。
 2日目は、兵庫県立美術館の相良周作氏による発表「兵庫県立美術館のコレクションについて」を聴講。県政100年を機に建設され、震災後の文化復興のシンボルとしての意味合いも担った歴史と収集活動については、近代美術館から「近代」の呼称を外した美術館になることで、現代まで視野を広げ、包括的に必要な作品を収蔵していくという視点があるとの発言もあった。さらに本論として、「ハナヤ勘兵衛の時代デェ!!」(2017年)や「小磯良平と吉原治良」展(2018年)など地域美術への取組の実践例が紹介されたが、特に、「レトロ・モダン神戸―中山岩太たちが遺した戦前の神戸」(2010年の「甦る中山岩太―モダニズムの光と影」展と併催)は、戦前の神戸風景を捉えた作品を広く調査した実績を伴うオリジナルの企画として注目された。あわせて、館長補佐の飯尾由貴子氏や相澤邦彦氏から説明を受けつつ、展示作業中のコレクション展会場や修復中の作品についても実見の機会を得た。
 山田諭幹事の進行による質疑では、各館の収集方針と地域の作家との関係や、地域美術研究の現状での課題や問題点、資料の整理や活用などについて意見が交わされた。
 なお、来年度の会合は、総会に合わせて春に北海道ブロック、秋に東京ブロックで開催予定である。
(広島県立美術館 藤崎綾)

出席者:13名

部会長:西村勇晴(北九州市立美術館館長)
幹 事:山田 諭(京都市美術館) 
幹 事:藤崎 綾(広島県立美術館)
幹 事:泰井 良(静岡県立美術館)
知野季里穂(田辺市立美術館)
山梨俊夫(国立国際美術館)
廣瀬就久(岡山県立美術館)
一柳友子(香川県立ミュージアム)
井須圭太郎(新居浜市美術館)
発表者:奥村一郎(和歌山県立近代美術館)
    藤本真名美(和歌山県立近代美術館)
    相良周作(兵庫県立美術館)
小林豊子(全国美術館会議事務局)
Copyright © 2011 The Japanese Council of Art Museums All Rights Reserved.