保存研究部会過去の活動

日時
2024年8月1日(木) ~2024年8月2日(金)
場所
松本市美術館 1階
講座室

第59回保存研究部会会合報告

内 容

8月1日(木)1日目
14:00~14:10 開会挨拶 木本文平部会長/碧南市藤井達吉現代美術館
14:10~15:30 協議、連絡事項
1. 2025年度以降の幹事について
  今年度より、幹事体制の輪番制がスタートしました。東日本/西日本地域から、それぞれ事務
 幹事と企画幹事を各1名ずつ、計4名で担当します。2025(令和7)年度は、東日本の事務幹事
 は千葉県美・神野さん、西日本の事務幹事は広島県美・岡地さんにご担当いただくことになりま
 した。東日本・西日本とも、次年度の企画幹事は現事務幹事が担当します。
2. 賛助会員・個人会員の入会希望について
  昨年度、賛助会員・個人会員の方から部会入
 会のご希望をいただき、正会員以外の部会入会
 の可否について検討を続けていましたが、協議
 を重ねた結果、部会への入会は正会員のみ可と
 することとしました(但し、元部会員で退職後
 に個人会員へ移行した方は入会可)。メーリン
 グリストを利用して行われる情報交換や、部会
 合でのバックヤードツアーなど、秘匿性の高い
 情報が扱われる部会であることを考慮した結果
 です。
  また、同様の理由により、部会合へのオブザーバー参加も、今後は正会員と、部会OB・OGの
 個人会員のみとさせていただきます。
3. 新入会員のアナウンスについて/部会名簿の更新について
  近年入会希望者が増加しており、連絡頻度が上がっていたことから、今後は新入会員の周知連
 絡と名簿更新を年4回(3月、6月、9月、12月の月末)にまとめさせていただきます。
4. エキヒュームSの製造終了について
  今年初めに燻蒸ガス「エキヒュームS」の販売終了が発表されたことを受け、今後の燻蒸方法
 や虫カビ対策について意見交換を行いました。エキヒュームSと同様に殺カビ効果のある燻蒸ガ
 ス「アルプ」は取り扱い業者が限られていることと、ゆくゆくはアルプも廃止に向かうだろうと
 いう見通しがあることから、今後の対策についてはさらなる調査が必要です。次回会合までに、
 アンケートフォームを使って各館の対応を取り
 まとめることになりました。
5. 指定品の展示公開日数について
  国宝・重要文化財の展示公開日数について、
 近年運用が厳密化し、文化庁によって定められ
 た公開日数に自館での展示日数がカウントされ
 るようになりました。自館での公開も制限せざ
 るを得ない状況について、6月の総会で会員館
 より問題提起があった旨、情報共有がなされま
 した。
15:50~16:45 バックヤードツアー
 企画幹事・武藤さん、松本市美術館・渋田見さん、稲村さん、中澤さん、藤原さんのご案内で、バックヤードを見学させていただきました。展示倉庫、収蔵庫、トラックヤード、一時保管庫を見学しました。収蔵庫内は地震対策や簀子による通気対策が施され、作品の住所は作品管理システムと紐づけられているそうで、整理の行き届いた様子を興味深く拝見しました。また、大型の電動棚にも感嘆の声が上がりました。展示用の備品を保管している展示倉庫では、2021年にリニューアルされた照明の詳細についても質問が飛び交いました。

8月2日(金)2日目 
10:00~12:00 講演及び質疑応答「博物館の展示空間における空気汚染物質の管理と対策事
         例」
         講師:和泉田絢子氏(文化財防災センター・九州国立博物館 研究員)
 保存科学がご専門の和泉田絢子さんから、特に展示ケースを使用した場合の空気汚染物質、それらの汚染物質に起因する文化財の劣化事例、汚染物質の発生源とその調査方法・結果、美術館で行える対策事例について、ご講演いただきました。文化財を劣化させる空気汚染物質には、有機酸、アルデヒド類、アンモニア、硫黄化合物などがあり、一般的には木材・合板・接着剤・塗料などの展示材料やコンクリートなどの建材などが発生源と言われていました。しかしながら、海揚がり品・火薬・火山灰埋蔵物など発生源が文化財自身、という事例もあるという事実をお聞きし、聴講者は非常に驚いていました。
 その後、展示ケース内の空気汚染物質の測定方法や適正な基準値、さらに美術館・博物館内で行える空気汚染物質による文化財の劣化を緩和させる展示材料・手法と、様々な材料の組み合わせと手法で行った場合の実験結果、九博での試みなど、各館でも実践可能な方法についてお話していただきました。空気汚染物質は文化財の劣化を促進するだけでなく、我々人間がシックハウス症候群になる原因でもあり、文化財にも人間にも安全且つ適正な展示材料を選択せねばならないことを再認識する機会となりました。
 講演後の質疑応答では、強制換気やガス吸着材料などの安全性やコスト面を心配する質問、具体的な使用期間など、沢山の質問が出ました。

12:00~12:10 連絡事項
 全美事務局より、文化財レスキュー事業の現状報告と参加依頼を再度行いました。全美では、令和6年能登半島地震における被災文化財及び2019年台風19号による水害で被災した川崎市市民ミュージアムの美術部門の文化財レスキュー事業を継続しています。双方の事業とも、現場の状況も事業開始当初より大幅に変化していることや、参加条件の緩和や救援要請増加数なども報告されました。全美会員館の職員らによる継続的、且つ、さらなる協力を呼びかけました。
 また、6月6日に弘前で開催された全美社員総会で東京ステーションギャラリー館長の冨田章さんが新たな会長になられたという会長交代について報告がありました。
 保存研究部会第60回部会合は、岩手県立美術館で12月初旬までに開催される予定です。現在、企画幹事の根本さんと盛本さんが日程・内容ともに調整中です。
12:10~12:15 閉会挨拶 木本文平部会長
13:30~16:30(往復移動含む)オプショナルツアー:セイコーエプソン見学
(報告者:国立西洋美術館 邊牟木尚美、国立国際美術館 小川絢子)

出席者

1日目:部会員24名、事務局1名
2日目午前:部会員23名、事務局1名、オブザーバー9名
2日目午後:部会員13名、オブザーバー6名



 
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