第18回地域美術研究部会会合報告
第18回目の会合は東京・世田谷美術館を会場に、「東急暮らしと街の文化―100年の時を拓く―」展の観覧と合わせて開催した。企業とのコラボレーション展を長く続けている同館の活動について、橋本善八館長と池㞍豪介学芸員の二人に発表をお願いした。
橋本館長からは、「企業と美術シリーズについて」として、世田谷の立地を生かした企業との連携について発表をいただいた。2007年、福原義春氏より駒井哲郎作品500点の寄贈を受けたことをきっかけにして、福原氏の祖父である福原信三・資生堂と美術の展覧会が企画された。続いて2013年には二子玉川にショッピングセンターがある高島屋と連携、明治以降の美術史の中で百貨店が果たした役割について掘り下げた。さらに2015年には、区内にある東洋一の規模と謳われた東宝スタジオに焦点を当て、特撮映画に関わる美術家などを紹介した。また、2016年には、木をテーマにして竹中工務店との連携を試み、近代建築史を振り返った。各企業は日本の近代化の過程において、製品を通じて人間生活に関わっており、その歩みは美術と共通するものがある、として、重要な文化資料である企業アーカイヴに光を当てるねらいが示された。
池㞍学芸員からは、2020年からの「美術家たちの沿線物語」と題したコレクション展を経て、今回の「東急」展に至る経緯が紹介された。これまで、田園都市線・世田谷線編(2020-1年)、大井町線・目黒線・東横線編(2022年)、京王線・井の頭線編(2023-4年)、小田急線編(2024年)と続くシリーズで、沿線に居住する美術家のつながり、活動が検証されてきた。関東大震災をきっかけとして美術家が世田谷区に居を構えるようになったといい、鉄道を核とした東京郊外の宅地開発が文化形成に大きく関わっていることを印象づけた。さらに、同館の作家調査の方法として、『日本美術年鑑』(1927-1968)、『美術手帖 年鑑』(1957-2006)の住所録から世田谷区居住者を抜き出し、エクセルに入力、地図に写していくという根気強い作業が紹介された。開館以来、地元作家の調査は行っていたものの、不十分だと感じて2013年より開始した手法だという。現在までに約3,000件がデータとして集積されている。
企業コラボレーション展として大きく展開された今回の「東急」展では、路線ごとに作家たちが紹介された(例えば平福百穂、麻生三郎、向井潤吉、桑原甲子雄)。住所でなく鉄道沿線で人脈が形成されるのは、東京特有の文化と思われ、地域美術研究の新しい手法として興味深かった。東急の切符や車両模型、ジオラマや土地開発パンフレット、建築図面など多岐にわたる資料が紹介されており、鉄道ファンと思われる熱心な観覧者の姿も多く見受けられた。鉄道を介した文化が、美術館という場で結実した感があった。
続く質疑応答では、膨大な世田谷区居住作家の作品寄贈の依頼にどう応えるか、また企業との連携を具体的にどう進めたかなどが話題になった。他地域の学芸員にとっても、今後の美術館運営に参考になる事例、情報が多く得られる有意義な会であった。
なお、会合の最後に部会員で打ち合わせを行い、現在編集を進めている論文集「地域美術スタディーズ」(仮題)について、スケジュールや公表の方法、経費の充当手段などについて相談した。

橋本館長からは、「企業と美術シリーズについて」として、世田谷の立地を生かした企業との連携について発表をいただいた。2007年、福原義春氏より駒井哲郎作品500点の寄贈を受けたことをきっかけにして、福原氏の祖父である福原信三・資生堂と美術の展覧会が企画された。続いて2013年には二子玉川にショッピングセンターがある高島屋と連携、明治以降の美術史の中で百貨店が果たした役割について掘り下げた。さらに2015年には、区内にある東洋一の規模と謳われた東宝スタジオに焦点を当て、特撮映画に関わる美術家などを紹介した。また、2016年には、木をテーマにして竹中工務店との連携を試み、近代建築史を振り返った。各企業は日本の近代化の過程において、製品を通じて人間生活に関わっており、その歩みは美術と共通するものがある、として、重要な文化資料である企業アーカイヴに光を当てるねらいが示された。
池㞍学芸員からは、2020年からの「美術家たちの沿線物語」と題したコレクション展を経て、今回の「東急」展に至る経緯が紹介された。これまで、田園都市線・世田谷線編(2020-1年)、大井町線・目黒線・東横線編(2022年)、京王線・井の頭線編(2023-4年)、小田急線編(2024年)と続くシリーズで、沿線に居住する美術家のつながり、活動が検証されてきた。関東大震災をきっかけとして美術家が世田谷区に居を構えるようになったといい、鉄道を核とした東京郊外の宅地開発が文化形成に大きく関わっていることを印象づけた。さらに、同館の作家調査の方法として、『日本美術年鑑』(1927-1968)、『美術手帖 年鑑』(1957-2006)の住所録から世田谷区居住者を抜き出し、エクセルに入力、地図に写していくという根気強い作業が紹介された。開館以来、地元作家の調査は行っていたものの、不十分だと感じて2013年より開始した手法だという。現在までに約3,000件がデータとして集積されている。
企業コラボレーション展として大きく展開された今回の「東急」展では、路線ごとに作家たちが紹介された(例えば平福百穂、麻生三郎、向井潤吉、桑原甲子雄)。住所でなく鉄道沿線で人脈が形成されるのは、東京特有の文化と思われ、地域美術研究の新しい手法として興味深かった。東急の切符や車両模型、ジオラマや土地開発パンフレット、建築図面など多岐にわたる資料が紹介されており、鉄道ファンと思われる熱心な観覧者の姿も多く見受けられた。鉄道を介した文化が、美術館という場で結実した感があった。
続く質疑応答では、膨大な世田谷区居住作家の作品寄贈の依頼にどう応えるか、また企業との連携を具体的にどう進めたかなどが話題になった。他地域の学芸員にとっても、今後の美術館運営に参考になる事例、情報が多く得られる有意義な会であった。
なお、会合の最後に部会員で打ち合わせを行い、現在編集を進めている論文集「地域美術スタディーズ」(仮題)について、スケジュールや公表の方法、経費の充当手段などについて相談した。
(福島県立美術館 増渕鏡子)
出席者:16名(部会員10名、オブザーバー2名、発表者2名、事務局2名)
部会長:速水 豊(三重県立美術館長)
幹事:藤崎 綾(広島県立美術館)
幹事:迫内祐司(小杉放菴記念日光美術館)
幹事:重松知美(北九州市立美術館)
幹事:増渕鏡子(福島県立美術館)
杉村浩哉(栃木市立美術館)
折井貴恵(川越市立美術館)
津上千春(千葉県立美術館)
弘中智子(板橋区立美術館)
奥村一郎(和歌山県立近代美術館)
オブザーバー:
大衡彩織(一関市博物館)
山田晃子(太田市美術館・図書館)
発表者:
橋本善八(世田谷美術館)
池㞍豪介(世田谷美術館)
事務局:
山梨俊夫(全国美術館会議事務局)
小林豊子(全国美術館会議事務局)
幹事:藤崎 綾(広島県立美術館)
幹事:迫内祐司(小杉放菴記念日光美術館)
幹事:重松知美(北九州市立美術館)
幹事:増渕鏡子(福島県立美術館)
杉村浩哉(栃木市立美術館)
折井貴恵(川越市立美術館)
津上千春(千葉県立美術館)
弘中智子(板橋区立美術館)
奥村一郎(和歌山県立近代美術館)
オブザーバー:
大衡彩織(一関市博物館)
山田晃子(太田市美術館・図書館)
発表者:
橋本善八(世田谷美術館)
池㞍豪介(世田谷美術館)
事務局:
山梨俊夫(全国美術館会議事務局)
小林豊子(全国美術館会議事務局)