第17回地域美術研究部会会合報告
第17回会合は、青森県立美術館にて開催した。東北ブロックでの開催は2015年の郡山市立美術館以来、2回目となる。今回は、池田亨氏(青森県立美術館)と奥脇嵩大氏(同館)の二氏に登壇いただいた。
まず池田氏による発表「芸術の青森展と青森県立美術館の取り組み」では、青森県の個性豊かな芸術文化を世界に向けて発信するというミッションに基づいた、地域に根差した活動方針と収集方針についての解説と、その実践例について紹介いただいた。青森県内の各地で育まれた「縄文、工芸、近代美術、文学など多様に広がる風土に根ざした豊かな芸術的資産」を収集対象に含めることにより、個性豊かなコレクション形成が一層促されるのは大きな強みだろう。また一方で、同館の開館以前から続けられてきた地域美術の調査研究の蓄積もその下地となっていることも忘れてはならない。開館5周年記念展「芸術の青森」(2011年)は縄文土器に漆工芸、こぎん刺しなどの伝統工芸、近代版画にナンシー関までジャンルの枠にはまらない多彩な構成で、まさに活動方針の実践例といえる。青森の美術を発信するというゆるぎない姿勢が一貫していることが印象的であった。
続いて奥脇氏による発表「美術館堆肥化計画と堆肥化宣言展について」では、2021~23年に手がけられたアートプロジェクトを紹介いただいた。「美術館堆肥化計画」事業は、美術館が館外へ飛び出し、アーティストや地域と共に地域の魅力を発掘・発信することを目指すプロジェクト。美術館の役割をさまざまな活動の成長を支える「肥やし(堆肥)」と位置づけ、美術館的な体験を目的としたPR展示「旅するケンビ」と、アーティストと共に地域の人々の記憶や歴史から新たに作品を作り上げる「耕すケンビ」の2部門と、年度末にそれらを美術館で展示する「成果展示」から構成されている。
2021年は津軽地域、2022年は県南地域、2023年は下北半島の各所で開催された。
そして3年間の事業の成果を、企画展「美術館堆肥化宣言」展(2024年)にて紹介し、同事業で出会ったさまざまな人や事などを堆肥者(アーティストか否かに関わらず、地域を豊かに肥やす人)と命名し、その活動を7つの宣言(章)で紹介。地域や人々と真摯に寄り添い下支えする姿勢を貫くことで、美術館のあり方を問い直している。奥脇氏はこれを「リビング・インフラ(生きるための下支え)」と提唱されていた。これからの美術館(特に地方美術館)が地域に対してどのような役割を成していけるのか、その一つの示唆を与えてくれる意欲的な企画と感じた。
続く質疑応答では、地域と人との縁についての感想、予算や事業ビジター展示についての質問や、参加者からもアウトリーチ事業の紹介もあるなど活発な意見交換が行われた。
また、当部会の過去の活動をまとめた事例集の製作について、部会長・幹事より現時点での進捗を報告した。2025年度末の発行を目指すことと、出版助成に関する話し合いが持たれた。
まず池田氏による発表「芸術の青森展と青森県立美術館の取り組み」では、青森県の個性豊かな芸術文化を世界に向けて発信するというミッションに基づいた、地域に根差した活動方針と収集方針についての解説と、その実践例について紹介いただいた。青森県内の各地で育まれた「縄文、工芸、近代美術、文学など多様に広がる風土に根ざした豊かな芸術的資産」を収集対象に含めることにより、個性豊かなコレクション形成が一層促されるのは大きな強みだろう。また一方で、同館の開館以前から続けられてきた地域美術の調査研究の蓄積もその下地となっていることも忘れてはならない。開館5周年記念展「芸術の青森」(2011年)は縄文土器に漆工芸、こぎん刺しなどの伝統工芸、近代版画にナンシー関までジャンルの枠にはまらない多彩な構成で、まさに活動方針の実践例といえる。青森の美術を発信するというゆるぎない姿勢が一貫していることが印象的であった。
続いて奥脇氏による発表「美術館堆肥化計画と堆肥化宣言展について」では、2021~23年に手がけられたアートプロジェクトを紹介いただいた。「美術館堆肥化計画」事業は、美術館が館外へ飛び出し、アーティストや地域と共に地域の魅力を発掘・発信することを目指すプロジェクト。美術館の役割をさまざまな活動の成長を支える「肥やし(堆肥)」と位置づけ、美術館的な体験を目的としたPR展示「旅するケンビ」と、アーティストと共に地域の人々の記憶や歴史から新たに作品を作り上げる「耕すケンビ」の2部門と、年度末にそれらを美術館で展示する「成果展示」から構成されている。
2021年は津軽地域、2022年は県南地域、2023年は下北半島の各所で開催された。
そして3年間の事業の成果を、企画展「美術館堆肥化宣言」展(2024年)にて紹介し、同事業で出会ったさまざまな人や事などを堆肥者(アーティストか否かに関わらず、地域を豊かに肥やす人)と命名し、その活動を7つの宣言(章)で紹介。地域や人々と真摯に寄り添い下支えする姿勢を貫くことで、美術館のあり方を問い直している。奥脇氏はこれを「リビング・インフラ(生きるための下支え)」と提唱されていた。これからの美術館(特に地方美術館)が地域に対してどのような役割を成していけるのか、その一つの示唆を与えてくれる意欲的な企画と感じた。
続く質疑応答では、地域と人との縁についての感想、予算や事業ビジター展示についての質問や、参加者からもアウトリーチ事業の紹介もあるなど活発な意見交換が行われた。
また、当部会の過去の活動をまとめた事例集の製作について、部会長・幹事より現時点での進捗を報告した。2025年度末の発行を目指すことと、出版助成に関する話し合いが持たれた。
(北九州市立美術館 重松知美)
出席者:19名(部会員11名、オブザーバー4名、事務局2名、発表者2名)
部会長:速水豊(三重県立美術館長)
幹事:増渕鏡子(福島県立美術館)
幹事:迫内祐司(小杉放菴記念日光美術館)
幹事:重松知美(北九州市立美術館)
杉村浩哉(栃木市立美術館)
津上千春(千葉県立美術館)
弘中智子(板橋区立美術館)
菅谷富夫(大阪中之島美術館)
一柳友子(香川県立ミュージアム・東山魁夷せとうち美術館)
西本匡伸(福岡県立美術館)
松久保修平(長崎県美術館)
オブザーバー:
濵﨑礼二(宮城県美術館)
貝塚健(千葉県立美術館)
細谷芳(アーティゾン美術館)
樽澤武秀(アドミュージアム東京)
事務局:
山梨俊夫(全国美術館会議事務局長)
端山聡子(東京国立近代美術館)
幹事:増渕鏡子(福島県立美術館)
幹事:迫内祐司(小杉放菴記念日光美術館)
幹事:重松知美(北九州市立美術館)
杉村浩哉(栃木市立美術館)
津上千春(千葉県立美術館)
弘中智子(板橋区立美術館)
菅谷富夫(大阪中之島美術館)
一柳友子(香川県立ミュージアム・東山魁夷せとうち美術館)
西本匡伸(福岡県立美術館)
松久保修平(長崎県美術館)
オブザーバー:
濵﨑礼二(宮城県美術館)
貝塚健(千葉県立美術館)
細谷芳(アーティゾン美術館)
樽澤武秀(アドミュージアム東京)
事務局:
山梨俊夫(全国美術館会議事務局長)
端山聡子(東京国立近代美術館)