第29回学芸員研修会
テーマ
「美術館はホームページでどのような作品情報を発信すべきか?
/学芸員は美術情報資料をどこで入手するのか?」
/学芸員は美術情報資料をどこで入手するのか?」
開催趣旨
過去数年にわたって、各方面で文化財や美術作品のデータベース化・ネットワーク化の必要性が叫ばれてきました。しかし作品情報の出所となるべき美術館の実状を置き去りにして議論が進むばかりで、多くの美術館関係者にとっては現場との落差が大きすぎるというのが実感なのではないでしょうか。
このような現状認識から、情報・資料研究部会は「デジタル」の視点を一旦脇に置き、各館共通の伝統的課題といえる収蔵作品目録に着目して、その全体像を俯瞰する活動に2年がかりで取り組んできました。このプロジェクトは『全国美術館会議会員館 収蔵品目録総覧 2014』(以下、『全美目録総覧2014』)として実を結び、2014年12月には全美のホームページで公開される運びとなりました。本研修会はこの取り組みの集大成として開催するものです。
研修会は全体を2部構成とし、第1部では『全美目録総覧2014』の経過報告を行い、第2部では事例等報告を通じて本総覧にまつわるふたつの論点を取り上げる予定です。第1の論点は、収蔵作品目録では概ね作家名・作品名・制作年・技法・支持体・寸法といった基本項目が中心となっていますが、美術館が伝えるべき作品の情報とは果たしてそれだけで十分なのだろうかという点です。そして第2の論点は、『全美目録総覧2014』に収録された資料はどこで閲覧できるのかという点です。後者では学芸員の調査研究基盤としての美術図書室のあり方が問題となりますが、これは同時に、前者の作品情報の中身を問うことにも絡んでくる構造的課題であると言えるでしょう。情報・資料をめぐるこのような議論が活発に展開する機会となることを願っています。
このような現状認識から、情報・資料研究部会は「デジタル」の視点を一旦脇に置き、各館共通の伝統的課題といえる収蔵作品目録に着目して、その全体像を俯瞰する活動に2年がかりで取り組んできました。このプロジェクトは『全国美術館会議会員館 収蔵品目録総覧 2014』(以下、『全美目録総覧2014』)として実を結び、2014年12月には全美のホームページで公開される運びとなりました。本研修会はこの取り組みの集大成として開催するものです。
研修会は全体を2部構成とし、第1部では『全美目録総覧2014』の経過報告を行い、第2部では事例等報告を通じて本総覧にまつわるふたつの論点を取り上げる予定です。第1の論点は、収蔵作品目録では概ね作家名・作品名・制作年・技法・支持体・寸法といった基本項目が中心となっていますが、美術館が伝えるべき作品の情報とは果たしてそれだけで十分なのだろうかという点です。そして第2の論点は、『全美目録総覧2014』に収録された資料はどこで閲覧できるのかという点です。後者では学芸員の調査研究基盤としての美術図書室のあり方が問題となりますが、これは同時に、前者の作品情報の中身を問うことにも絡んでくる構造的課題であると言えるでしょう。情報・資料をめぐるこのような議論が活発に展開する機会となることを願っています。
プログラム
11:00─ 国立西洋美術館「グエルチーノ展」
自由見学(─13:00まで)
12:30-13:00 受付
13:00 開会・開会挨拶
13:05 趣旨説明 幹事
[第1部]
13:10-13:40
「全国美術館会議会員館 収蔵品目録総覧
2014」作成にいたる経緯と作業経過報
告 /川口雅子(国立西洋美術館)
[第2部]
13:40-14:40
テーマ1「美術館はホームページでどのような作品情報を発信すべきか?」
発表1「事例報告─三重県立美術館のホームページ(仮)」
/田中善明(三重県立美術館)
発表2「日本の美術館ホームページに
おける作品情報発信の概況」
/鴨木年泰(東京富士美術館)
14:40-14:50 休憩(10分)
14:50-15:50
テーマ2「学芸員は美術情報資料をど
こで入手するのか?」
発表3「地域・人材の問題と美術情報
資料へのアクセス(仮)」
/福田浩子(広島県立美術館)
発表4「外から見る日本の美術情報資料の現在
─在外日本美術資料専門家(JAL)からの提言」
/水谷長志(東京国立近代美術館)
15:50-16:05 休憩(15分)
16:05-16:50
討議「美術館の情報発信と美術情報の拠点─展望と課題(仮)」
/発表者全員、討議進行:鴨木年泰(情報・資料研究部会 幹事)
テーマ1に関する討議
テーマ2に関する討議
質疑応答
16:50-17:00
閉会挨拶/越智裕二郎
(情報・資料研究部会 部会長)
自由見学(─13:00まで)
12:30-13:00 受付
13:00 開会・開会挨拶
13:05 趣旨説明 幹事
[第1部]
13:10-13:40
「全国美術館会議会員館 収蔵品目録総覧
2014」作成にいたる経緯と作業経過報
告 /川口雅子(国立西洋美術館)
[第2部]
13:40-14:40
テーマ1「美術館はホームページでどのような作品情報を発信すべきか?」
発表1「事例報告─三重県立美術館のホームページ(仮)」
/田中善明(三重県立美術館)
発表2「日本の美術館ホームページに
おける作品情報発信の概況」
/鴨木年泰(東京富士美術館)
14:40-14:50 休憩(10分)
14:50-15:50
テーマ2「学芸員は美術情報資料をど
こで入手するのか?」
発表3「地域・人材の問題と美術情報
資料へのアクセス(仮)」
/福田浩子(広島県立美術館)
発表4「外から見る日本の美術情報資料の現在
─在外日本美術資料専門家(JAL)からの提言」
/水谷長志(東京国立近代美術館)
15:50-16:05 休憩(15分)
16:05-16:50
討議「美術館の情報発信と美術情報の拠点─展望と課題(仮)」
/発表者全員、討議進行:鴨木年泰(情報・資料研究部会 幹事)
テーマ1に関する討議
テーマ2に関する討議
質疑応答
16:50-17:00
閉会挨拶/越智裕二郎
(情報・資料研究部会 部会長)
内容
2015 年3 月9 日、国立西洋美術館において、全国美術館会議・第29 回学芸員研修会が開催されました。本年度は情報・資料研究部会が研修会の企画を担当しました。
当研究部会は、これまで約20 年間の活動を通して各美術館の館蔵作品・資料のデータベース化、文化財のネットワーク化の必要を訴え、その普及に意を注いできました。そして直近では各館共通の伝統的課題といえる収蔵作品目録に着目して、その全体像を俯瞰する活動に2 年がかりで取り組んできました。このプロジェクトは『全国美術館会議会員館 収蔵品目録総覧 2014』(以下、『全美目録総覧2014』)として実を結び、2014 年12 月には全美のホームページで公開される運びとなりました(http://zenbi.jp/data_list.php?g=93&d=13)。本研修会はこの取り組みの集大成として企画したものです。
研修会は全体を2 部構成とし、第1 部では当研究部会幹事の川口雅子氏(国立西洋美術館)より『全美目録総覧2014』の経過報告を行い、第2 部では本総覧にまつわるふたつの論点を取り上げて各発表者より発表が行われました。
第1の論点は、各美術館のホームページで発信される作品情報、またその発信情報のソースとなる収蔵品目録では概ね作家名・作品名・制作年・技法・支持体・寸法といった基本項目が中心となっていますが、美術館が伝えるべき作品の情報とは果たしてそれだけで十分なのだろうかという点です。
研修会では、美術館ホームページにおける情報発信のケーススタディを発表1として三重県立美術館の田中善明氏より報告いただき、研究部会がこれまで行ってきた国内美術館のホームページ調査に基づく概要を約30 館の事例紹介を通して発表2として筆者より報告しました。
そして第2 の論点は、『全美目録総覧2014』に収録された料はどこで閲覧できるのかという点です。ここでは学芸員の調査研究基盤としての美術図書室のあり方が問題となりますが、これは同時に、第1の論点である作品情報の中身を問うことにも絡んでくる構造的課題であるといえます。美術館の一学芸員の視点から美術情報にアクセスし利用する際の具体的な方策について発表3として広島県立美術館の福田浩子氏より報告いただき、東京国立近代美術館の水谷長志氏からは発表4として直近で開催されたJAL プロジェクト(海外日本美術資料専門家の招へい・研修・交流事業)の報告を通して美術情報へのアクセスと利用を可能にするため美術館に求められる意識改革、ビジョンが提起されました。
このように、今回の研修会では作品情報にまつわる様々な論点が個別に示されつつも相互に関連するという構成となりました。企画検討の段階で、この研修会のテーマを「美術館の作品情報発信」と端的に包括することもできた訳ですが、今回私たちはディスカッションの過程でそのそれぞれの論点を示したいということで「美術館は…発信すべきか?/学芸員は…入手するのか?」という大変に“ 長い” テーマを掲げることになりました。最終的に研修会当日は発表者を含めた参加者は135 名を数えました。国立西洋美術館の講堂がほぼ満席となり、全国美術館会議会員館各位の関心を集めるテーマであったと感じています。広報的なテーマではない作品情報発信に限定した内容で多くの参加者を見たことは、研究部会のこれまでの歩みを振り返る中でも特筆すべきことでした。
研修会の最後に発表者全員で行われた討議においては研修会が包含する要素が多く時間も限られていたために充分な議論が尽くせなかったところは反省点となりましたが、討議に寄せられた参加者の質問票では、ホームページの運用・システムについてや高画質画像の掲載に関する質問、著作権処理に関する質問などが多く寄せられました。これから作品情報発信に取り組もうと考えている参加館が多いことがうかがわれるものでした。本研修会が美術情報・資料をめぐるこのような関心が高まり議論が活発に展開していく一助となれば幸いです。
※本稿はアート・ドキュメンテーション学会『通信』105号の掲載原稿に加筆した。
当研究部会は、これまで約20 年間の活動を通して各美術館の館蔵作品・資料のデータベース化、文化財のネットワーク化の必要を訴え、その普及に意を注いできました。そして直近では各館共通の伝統的課題といえる収蔵作品目録に着目して、その全体像を俯瞰する活動に2 年がかりで取り組んできました。このプロジェクトは『全国美術館会議会員館 収蔵品目録総覧 2014』(以下、『全美目録総覧2014』)として実を結び、2014 年12 月には全美のホームページで公開される運びとなりました(http://zenbi.jp/data_list.php?g=93&d=13)。本研修会はこの取り組みの集大成として企画したものです。
研修会は全体を2 部構成とし、第1 部では当研究部会幹事の川口雅子氏(国立西洋美術館)より『全美目録総覧2014』の経過報告を行い、第2 部では本総覧にまつわるふたつの論点を取り上げて各発表者より発表が行われました。
第1の論点は、各美術館のホームページで発信される作品情報、またその発信情報のソースとなる収蔵品目録では概ね作家名・作品名・制作年・技法・支持体・寸法といった基本項目が中心となっていますが、美術館が伝えるべき作品の情報とは果たしてそれだけで十分なのだろうかという点です。
研修会では、美術館ホームページにおける情報発信のケーススタディを発表1として三重県立美術館の田中善明氏より報告いただき、研究部会がこれまで行ってきた国内美術館のホームページ調査に基づく概要を約30 館の事例紹介を通して発表2として筆者より報告しました。
そして第2 の論点は、『全美目録総覧2014』に収録された料はどこで閲覧できるのかという点です。ここでは学芸員の調査研究基盤としての美術図書室のあり方が問題となりますが、これは同時に、第1の論点である作品情報の中身を問うことにも絡んでくる構造的課題であるといえます。美術館の一学芸員の視点から美術情報にアクセスし利用する際の具体的な方策について発表3として広島県立美術館の福田浩子氏より報告いただき、東京国立近代美術館の水谷長志氏からは発表4として直近で開催されたJAL プロジェクト(海外日本美術資料専門家の招へい・研修・交流事業)の報告を通して美術情報へのアクセスと利用を可能にするため美術館に求められる意識改革、ビジョンが提起されました。
このように、今回の研修会では作品情報にまつわる様々な論点が個別に示されつつも相互に関連するという構成となりました。企画検討の段階で、この研修会のテーマを「美術館の作品情報発信」と端的に包括することもできた訳ですが、今回私たちはディスカッションの過程でそのそれぞれの論点を示したいということで「美術館は…発信すべきか?/学芸員は…入手するのか?」という大変に“ 長い” テーマを掲げることになりました。最終的に研修会当日は発表者を含めた参加者は135 名を数えました。国立西洋美術館の講堂がほぼ満席となり、全国美術館会議会員館各位の関心を集めるテーマであったと感じています。広報的なテーマではない作品情報発信に限定した内容で多くの参加者を見たことは、研究部会のこれまでの歩みを振り返る中でも特筆すべきことでした。
研修会の最後に発表者全員で行われた討議においては研修会が包含する要素が多く時間も限られていたために充分な議論が尽くせなかったところは反省点となりましたが、討議に寄せられた参加者の質問票では、ホームページの運用・システムについてや高画質画像の掲載に関する質問、著作権処理に関する質問などが多く寄せられました。これから作品情報発信に取り組もうと考えている参加館が多いことがうかがわれるものでした。本研修会が美術情報・資料をめぐるこのような関心が高まり議論が活発に展開していく一助となれば幸いです。
※本稿はアート・ドキュメンテーション学会『通信』105号の掲載原稿に加筆した。
鴨木 年泰 東京富士美術館、情報・資料研究部会 幹事
関連資料
予稿集(PDF:1.4MB)