第49回情報・資料研究部会会合報告
内 容
1. 「バイリンガル日本美術ウェブサイト(案)」について
前々回の部会から継続討議中のカルコン日米美術対話委員会(CULCON-Arts Dialogue
Committee)による「バイリンガル日本美術ウェブサイト(案)」に対する協力要請につい
て、現状を京都国立博物館の栗原祐司氏に問い合わせたところ、サイト作成を担当するミネポ
リス美術館の準備が遅れている由、2018年3月に同館でカルコンの会議が開催される予定なの
で、同プロジェクトの進展は、3月以降に明らかになると思われるとのことだった。よって、
全美とカルコンとの具体的な連携方法等については、上述の会議の結果を踏まえて、次回以降
の部会で検討することになった。
2. 「アーカイブズ所在調査」の取り組みについて
前回の部会で、今後実施すべき課題として議題にあがっていた「アーカイブズ所在調査」に関
し、プロジェクトとしてどのように具体化すべきか討議を行った。
まず、部会員の谷口英理が、国内外の先行例
の紹介を交えつつ、プロジェクト実現に向けた
要検討事項、調査結果のアウトプット形式等に
関して説明、提案を行った。内容は下記のとお
り。当プロジェクトを「美術関係アーカイブズ
資料所在調査(仮称)」と名付ける。その主旨
は、全国美術館会議参加館をはじめとした国内
の美術館・博物館にどのようなアーカイブズ資
料が所蔵されているのかを調査し、調査結果に
基づき、資料の所在情報及び概要情報を可視
化・共有化するものとする。なお、ここでの
「アーカイブズ」は、人や組織の活動に伴って作成、収受される、原則として一次情報を主体と
する記録資料のうち、重要なものを永続的に保管する行為、施設、保管された記録資料そのもの
を指すものと定義づける。また、プロジェクト実現のためには、「A)調査対象資料の範囲・定
義」(対象年代や対象となる資料の定義)、「B)資料所在情報のアウトプット形式」、「C)資
料概要の記述項目」、「D)アンケート項目と様式」、「E)調査結果の公開方法と公開範囲」、
「F)情報の更新体制」の6点について検討を重ね、方針を策定する必要がある。
続けて谷口から、上述のA)~F)それぞれについて次のような具体的なプランの提案があり、
それに対し討論が行われた。
・「A)調査対象資料の範囲・定義」:調査対
象は、近現代美術に関する(一次情報をベ
ースとした)記録資料から成る資料群とす
る。また、原則として、アーカイブズ資料
の整理における「出所原則」を尊重し、ア
イテム単位ではなく出所単位のまとまりで
把握できる資料に限定する。しかし、各美
術館では、必ずしも資料を出所単位のまと
まりで管理していないため、アンケート調
査を行っても必要な情報を採取できない可
能性も高い。よって調査前に、シンポジウム等、何らかの啓蒙活動の実施が必要と思われ
る。また、図書資料のみで構成される資料群(いわゆる「文庫」)を対象に含めるべきかど
うか、出所不明資料をどう扱うかについても検討が必要である。
以上の提案に対して、調査対象は「近現代」の資料に限定しなくてもよいのではないかという
意見が提出され、年代を限定しないことになった。また、次回の学芸員研修会を、アンケート調
査前の啓発活動の機会に充てることになった。さらに、アンケートの送付先を、最初は学芸員研
修会参加者に限定してはどうかという案が出た。送付先を学芸員研修会参加者の所属館に限定す
るか、全国美術館会議参加館全館にするかにつ
いては、今後引き続き検討する。
・「B)資料所在情報のアウトプット形式」:
資料群単位(=出所単位)で概要情報を記
述し、そのリンク集あるいは簡易データベ
ースを全国美術館会議のHPにて公開する。
以上の提案に対し、リンク集の形で十分では
ないかとの意見が出た。
・「C)資料概要の記述項目」: ISAD(G)
2nd. Edition(「国際標準記録史料記述の
一般原則」第2版)の「3 ELEMENTS OF
DESCRIPTION(記述要素)」の項目に準拠し、また、国内外のアーカイブズ機関が公開
しているフォンド記述項目も参照して設定するとの提案があり、記述項目案と概要記述サ
ンプルが提示された。
以上に対し、所在情報(メタデータ)の公開 状況、資料原本の公開状況だけでなく、複製
(デジタル・データ、マイクロ・フィルム等)の公開状況も項目に加えるべきではないかとい
う意見が出た。また、来年度、部会員の所属館が所蔵する資料についてサンプルの概要記述を
行い、全国美術館会議のHPにて「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮称)」β版とし
て仮公開してみることになった。
・「D)アンケート項目と様式」:「C)資料概要の記述項目」をベースとしながらも回答者
が記述しやすいように再構成した様式を作成すべきである。
以上の提案に対し、アンケート調査の際には、「公開」の定義(所在情報・概要情報を紙媒体
での公開するのか、webでの公開するのか等)をあらかじめ明確にして、許諾をとるべきとの意
見が出た。調査結果を、美術館アーカイブズをめぐる現状の問題点を把握するためにも有効活用
すべきとの意見が出た。そのため、アンケートには資料の収集・整理・公開に関する悩みや問題
についても記載してもらい、資料の所在情報・概要情報だけでなくアンケートの集計結果(非公
開希望の状況等)も公表する方向となった。
・「E)調査結果の公開方法と公開範囲」:原則として、全国美術館会議のHPにて公開する
ことを目指すが、その際の公開範囲を一般向けとするか、会員向けとするか、登録制とす
るかといった公開範囲については、アンケート調査結果を踏まえて改めて検討すべきであ
ろう。また、所蔵館から非公開希望があった所在情報の扱いについても、今後検討が必要
である。
以上の提案に対し、「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮称)」の利用対象は専門家
を想定し、内容もそれに合わせたものとすべきだが、データそのものはオープン・アクセスにす
ることが望ましいとの意見が出た。
・「F)情報の更新体制」:調査結果公開後、所蔵資料の整理状況の進展による記述内容の変
更や、新規資料の収蔵等が想定されるため、数年おきに情報を更新するための体制作りが
必要であるとの提案があった。
以上の他、アンケートの回収率をあげるために、地域美術研究部会をはじめ他の部会に協力要
請してはどうかという意見が出た。また、継続的なプロジェクトにしていくための一案として、
全国美術館会議それ自体の機関アーカイブズを編成し、その所在情報を「美術関係アーカイブズ
資料所在情報一覧(仮称)」に掲載するという発想もあるという意見が提出された。これに対し
機関アーカイブズを整備している美術館、博物館は現状ではほとんどないため、さまざまな困難
が想定されるという反論もあった。
最後に、「美術関係アーカイブズ資料所在調査(仮称)」の実現に向けたワークフロー及びス
ケジュールを討議し、以下の要領で進めることになった。
【2017年度~2018年度】
①A)~E)について検討し、特にA)~C)については仮の基準・項目を確定する。情報資料
研究部会員の所属美術館(及び協力を得られそうな美術館)の所蔵資料について、概要記
述を作成。作業過程を踏まえてA)~D)を再検討。基準・項目・アンケート様式を正式に
確定する。
②①で作成した概要記述を元に、「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」β版
(PDFのリンク集)を作成し、全国美術館会議のHPで仮公開する。
③②で作成したβ版に基づき、学芸員研修会の場で、アーカイブズ資料の所在調査の意義に
関する啓発活動を行う(2019年3月予定)。
【2019年度】
④全国美術館会議総会(2019年5月予定)で、アンケート調査実施に関する告知を行う。
⑤アンケート様式を、送付(アンケート第1弾)。記載に当たっては、②で作成したβ版を参
照してもらう。
⑥アンケート結果の回収。アンケート結果に基づき各資料群の概要記述を作成(部会員が分
担)。作成した概要記述を所蔵館担当者に戻し、内容を確認してもらう。
【2020年度~】
⑦概要記述を「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」β版に統合。
⑧アンケート結果に基づき、「E)調査結果の公開方法と公開範囲」を再検討する。検討結果
にしたがって「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」正式版を公開。
⑨アンケート第1弾に協力を得られなかった館等を対象に、アンケート第2弾、第3弾を送付
(会員館以外についても検討)。回収結果を踏まえて、「美術関係アーカイブズ資料所在
情報一覧(仮)」正式版を更新。
⑩所在情報のジャパンサーチへの統合が可能かどうかについて検討。
3. 今後の企画準備に関する協議並びに情報交換
次回の部会は事例見学会を兼ねて、東京都町田市の石橋財団アートリサーチセンターに協力
依頼する方向で検討することになった(2018年4月中旬予定)。
前々回の部会から継続討議中のカルコン日米美術対話委員会(CULCON-Arts Dialogue
Committee)による「バイリンガル日本美術ウェブサイト(案)」に対する協力要請につい
て、現状を京都国立博物館の栗原祐司氏に問い合わせたところ、サイト作成を担当するミネポ
リス美術館の準備が遅れている由、2018年3月に同館でカルコンの会議が開催される予定なの
で、同プロジェクトの進展は、3月以降に明らかになると思われるとのことだった。よって、
全美とカルコンとの具体的な連携方法等については、上述の会議の結果を踏まえて、次回以降
の部会で検討することになった。
2. 「アーカイブズ所在調査」の取り組みについて
前回の部会で、今後実施すべき課題として議題にあがっていた「アーカイブズ所在調査」に関
し、プロジェクトとしてどのように具体化すべきか討議を行った。
まず、部会員の谷口英理が、国内外の先行例
の紹介を交えつつ、プロジェクト実現に向けた
要検討事項、調査結果のアウトプット形式等に
関して説明、提案を行った。内容は下記のとお
り。当プロジェクトを「美術関係アーカイブズ
資料所在調査(仮称)」と名付ける。その主旨
は、全国美術館会議参加館をはじめとした国内
の美術館・博物館にどのようなアーカイブズ資
料が所蔵されているのかを調査し、調査結果に
基づき、資料の所在情報及び概要情報を可視
化・共有化するものとする。なお、ここでの
「アーカイブズ」は、人や組織の活動に伴って作成、収受される、原則として一次情報を主体と
する記録資料のうち、重要なものを永続的に保管する行為、施設、保管された記録資料そのもの
を指すものと定義づける。また、プロジェクト実現のためには、「A)調査対象資料の範囲・定
義」(対象年代や対象となる資料の定義)、「B)資料所在情報のアウトプット形式」、「C)資
料概要の記述項目」、「D)アンケート項目と様式」、「E)調査結果の公開方法と公開範囲」、
「F)情報の更新体制」の6点について検討を重ね、方針を策定する必要がある。
続けて谷口から、上述のA)~F)それぞれについて次のような具体的なプランの提案があり、
それに対し討論が行われた。
・「A)調査対象資料の範囲・定義」:調査対
象は、近現代美術に関する(一次情報をベ
ースとした)記録資料から成る資料群とす
る。また、原則として、アーカイブズ資料
の整理における「出所原則」を尊重し、ア
イテム単位ではなく出所単位のまとまりで
把握できる資料に限定する。しかし、各美
術館では、必ずしも資料を出所単位のまと
まりで管理していないため、アンケート調
査を行っても必要な情報を採取できない可
能性も高い。よって調査前に、シンポジウム等、何らかの啓蒙活動の実施が必要と思われ
る。また、図書資料のみで構成される資料群(いわゆる「文庫」)を対象に含めるべきかど
うか、出所不明資料をどう扱うかについても検討が必要である。
以上の提案に対して、調査対象は「近現代」の資料に限定しなくてもよいのではないかという
意見が提出され、年代を限定しないことになった。また、次回の学芸員研修会を、アンケート調
査前の啓発活動の機会に充てることになった。さらに、アンケートの送付先を、最初は学芸員研
修会参加者に限定してはどうかという案が出た。送付先を学芸員研修会参加者の所属館に限定す
るか、全国美術館会議参加館全館にするかにつ
いては、今後引き続き検討する。
・「B)資料所在情報のアウトプット形式」:
資料群単位(=出所単位)で概要情報を記
述し、そのリンク集あるいは簡易データベ
ースを全国美術館会議のHPにて公開する。
以上の提案に対し、リンク集の形で十分では
ないかとの意見が出た。
・「C)資料概要の記述項目」: ISAD(G)
2nd. Edition(「国際標準記録史料記述の
一般原則」第2版)の「3 ELEMENTS OF
DESCRIPTION(記述要素)」の項目に準拠し、また、国内外のアーカイブズ機関が公開
しているフォンド記述項目も参照して設定するとの提案があり、記述項目案と概要記述サ
ンプルが提示された。
以上に対し、所在情報(メタデータ)の公開 状況、資料原本の公開状況だけでなく、複製
(デジタル・データ、マイクロ・フィルム等)の公開状況も項目に加えるべきではないかとい
う意見が出た。また、来年度、部会員の所属館が所蔵する資料についてサンプルの概要記述を
行い、全国美術館会議のHPにて「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮称)」β版とし
て仮公開してみることになった。
・「D)アンケート項目と様式」:「C)資料概要の記述項目」をベースとしながらも回答者
が記述しやすいように再構成した様式を作成すべきである。
以上の提案に対し、アンケート調査の際には、「公開」の定義(所在情報・概要情報を紙媒体
での公開するのか、webでの公開するのか等)をあらかじめ明確にして、許諾をとるべきとの意
見が出た。調査結果を、美術館アーカイブズをめぐる現状の問題点を把握するためにも有効活用
すべきとの意見が出た。そのため、アンケートには資料の収集・整理・公開に関する悩みや問題
についても記載してもらい、資料の所在情報・概要情報だけでなくアンケートの集計結果(非公
開希望の状況等)も公表する方向となった。
・「E)調査結果の公開方法と公開範囲」:原則として、全国美術館会議のHPにて公開する
ことを目指すが、その際の公開範囲を一般向けとするか、会員向けとするか、登録制とす
るかといった公開範囲については、アンケート調査結果を踏まえて改めて検討すべきであ
ろう。また、所蔵館から非公開希望があった所在情報の扱いについても、今後検討が必要
である。
以上の提案に対し、「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮称)」の利用対象は専門家
を想定し、内容もそれに合わせたものとすべきだが、データそのものはオープン・アクセスにす
ることが望ましいとの意見が出た。
・「F)情報の更新体制」:調査結果公開後、所蔵資料の整理状況の進展による記述内容の変
更や、新規資料の収蔵等が想定されるため、数年おきに情報を更新するための体制作りが
必要であるとの提案があった。
以上の他、アンケートの回収率をあげるために、地域美術研究部会をはじめ他の部会に協力要
請してはどうかという意見が出た。また、継続的なプロジェクトにしていくための一案として、
全国美術館会議それ自体の機関アーカイブズを編成し、その所在情報を「美術関係アーカイブズ
資料所在情報一覧(仮称)」に掲載するという発想もあるという意見が提出された。これに対し
機関アーカイブズを整備している美術館、博物館は現状ではほとんどないため、さまざまな困難
が想定されるという反論もあった。
最後に、「美術関係アーカイブズ資料所在調査(仮称)」の実現に向けたワークフロー及びス
ケジュールを討議し、以下の要領で進めることになった。
【2017年度~2018年度】
①A)~E)について検討し、特にA)~C)については仮の基準・項目を確定する。情報資料
研究部会員の所属美術館(及び協力を得られそうな美術館)の所蔵資料について、概要記
述を作成。作業過程を踏まえてA)~D)を再検討。基準・項目・アンケート様式を正式に
確定する。
②①で作成した概要記述を元に、「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」β版
(PDFのリンク集)を作成し、全国美術館会議のHPで仮公開する。
③②で作成したβ版に基づき、学芸員研修会の場で、アーカイブズ資料の所在調査の意義に
関する啓発活動を行う(2019年3月予定)。
【2019年度】
④全国美術館会議総会(2019年5月予定)で、アンケート調査実施に関する告知を行う。
⑤アンケート様式を、送付(アンケート第1弾)。記載に当たっては、②で作成したβ版を参
照してもらう。
⑥アンケート結果の回収。アンケート結果に基づき各資料群の概要記述を作成(部会員が分
担)。作成した概要記述を所蔵館担当者に戻し、内容を確認してもらう。
【2020年度~】
⑦概要記述を「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」β版に統合。
⑧アンケート結果に基づき、「E)調査結果の公開方法と公開範囲」を再検討する。検討結果
にしたがって「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」正式版を公開。
⑨アンケート第1弾に協力を得られなかった館等を対象に、アンケート第2弾、第3弾を送付
(会員館以外についても検討)。回収結果を踏まえて、「美術関係アーカイブズ資料所在
情報一覧(仮)」正式版を更新。
⑩所在情報のジャパンサーチへの統合が可能かどうかについて検討。
3. 今後の企画準備に関する協議並びに情報交換
次回の部会は事例見学会を兼ねて、東京都町田市の石橋財団アートリサーチセンターに協力
依頼する方向で検討することになった(2018年4月中旬予定)。
(報告者:国立新美術館学芸課美術資料室 谷口英理)
参加者:8名
越智裕二郎(西宮市大谷記念美術館)部会長
鴨木年泰(東京富士美術館)幹事
川口雅子(国立西洋美術館)幹事
八柳サエ(横浜美術館)
谷口英理(国立新美術館)
住広昭子(東京国立博物館)
オブザーバー
黒澤美子(ブリヂストン美術館)
小林豊子(全国美術館会議 事務局)
鴨木年泰(東京富士美術館)幹事
川口雅子(国立西洋美術館)幹事
八柳サエ(横浜美術館)
谷口英理(国立新美術館)
住広昭子(東京国立博物館)
オブザーバー
黒澤美子(ブリヂストン美術館)
小林豊子(全国美術館会議 事務局)