情報・資料研究部会過去の活動一覧

日時
2018年1月24日(水)
14:00〜17:00
場所
国立西洋美術館
研究資料センター閲覧室

第49回情報・資料研究部会会合報告

内 容 

1. 「バイリンガル日本美術ウェブサイト(案)」について
  前々回の部会から継続討議中のカルコン日米美術対話委員会(CULCON-Arts Dialogue
 Committee)による「バイリンガル日本美術ウェブサイト(案)」に対する協力要請につい
 て、現状を京都国立博物館の栗原祐司氏に問い合わせたところ、サイト作成を担当するミネポ
 リス美術館の準備が遅れている由、2018年3月に同館でカルコンの会議が開催される予定なの
 で、同プロジェクトの進展は、3月以降に明らかになると思われるとのことだった。よって、
 全美とカルコンとの具体的な連携方法等については、上述の会議の結果を踏まえて、次回以降
 の部会で検討することになった。

2. 「アーカイブズ所在調査」の取り組みについて
  前回の部会で、今後実施すべき課題として議題にあがっていた「アーカイブズ所在調査」に関
 し、プロジェクトとしてどのように具体化すべきか討議を行った。 
  まず、部会員の谷口英理が、国内外の先行例
 の紹介を交えつつ、プロジェクト実現に向けた
 要検討事項、調査結果のアウトプット形式等に
 関して説明、提案を行った。内容は下記のとお
 り。当プロジェクトを「美術関係アーカイブズ
 資料所在調査(仮称)」と名付ける。その主旨
 は、全国美術館会議参加館をはじめとした国内
 の美術館・博物館にどのようなアーカイブズ資
 料が所蔵されているのかを調査し、調査結果に
 基づき、資料の所在情報及び概要情報を可視
 化・共有化するものとする。なお、ここでの
 「アーカイブズ」は、人や組織の活動に伴って作成、収受される、原則として一次情報を主体と
 する記録資料のうち、重要なものを永続的に保管する行為、施設、保管された記録資料そのもの
 を指すものと定義づける。また、プロジェクト実現のためには、「A)調査対象資料の範囲・定
 義」(対象年代や対象となる資料の定義)、「B)資料所在情報のアウトプット形式」、「C)資
 料概要の記述項目」、「D)アンケート項目と様式」、「E)調査結果の公開方法と公開範囲」、
 「F)情報の更新体制」の6点について検討を重ね、方針を策定する必要がある。
  続けて谷口から、上述のA)~F)それぞれについて次のような具体的なプランの提案があり、
 それに対し討論が行われた。 
  ・「A)調査対象資料の範囲・定義」:調査対
   象は、近現代美術に関する(一次情報をベ
   ースとした)記録資料から成る資料群とす
   る。また、原則として、アーカイブズ資料
   の整理における「出所原則」を尊重し、ア
   イテム単位ではなく出所単位のまとまりで
   把握できる資料に限定する。しかし、各美
   術館では、必ずしも資料を出所単位のまと
   まりで管理していないため、アンケート調
   査を行っても必要な情報を採取できない可
   能性も高い。よって調査前に、シンポジウム等、何らかの啓蒙活動の実施が必要と思われ
   る。また、図書資料のみで構成される資料群(いわゆる「文庫」)を対象に含めるべきかど
   うか、出所不明資料をどう扱うかについても検討が必要である。
  以上の提案に対して、調査対象は「近現代」の資料に限定しなくてもよいのではないかという
 意見が提出され、年代を限定しないことになった。また、次回の学芸員研修会を、アンケート調
 査前の啓発活動の機会に充てることになった。さらに、アンケートの送付先を、最初は学芸員研
 修会参加者に限定してはどうかという案が出た。送付先を学芸員研修会参加者の所属館に限定す
 るか、全国美術館会議参加館全館にするかにつ
 いては、今後引き続き検討する。
  ・「B)資料所在情報のアウトプット形式」:
   資料群単位(=出所単位)で概要情報を記
   述し、そのリンク集あるいは簡易データベ
   ースを全国美術館会議のHPにて公開する。
  以上の提案に対し、リンク集の形で十分では
 ないかとの意見が出た。
  ・「C)資料概要の記述項目」: ISAD(G)
   2nd. Edition(「国際標準記録史料記述の
   一般原則」第2版)の「3 ELEMENTS OF
   DESCRIPTION(記述要素)」の項目に準拠し、また、国内外のアーカイブズ機関が公開
   しているフォンド記述項目も参照して設定するとの提案があり、記述項目案と概要記述サ
   ンプルが提示された。
  以上に対し、所在情報(メタデータ)の公開 状況、資料原本の公開状況だけでなく、複製
 (デジタル・データ、マイクロ・フィルム等)の公開状況も項目に加えるべきではないかとい
 う意見が出た。また、来年度、部会員の所属館が所蔵する資料についてサンプルの概要記述を
 行い、全国美術館会議のHPにて「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮称)」β版とし
 て仮公開してみることになった。
   ・「D)アンケート項目と様式」:「C)資料概要の記述項目」をベースとしながらも回答者
    が記述しやすいように再構成した様式を作成すべきである。
  以上の提案に対し、アンケート調査の際には、「公開」の定義(所在情報・概要情報を紙媒体
 での公開するのか、webでの公開するのか等)をあらかじめ明確にして、許諾をとるべきとの意
 見が出た。調査結果を、美術館アーカイブズをめぐる現状の問題点を把握するためにも有効活用
 すべきとの意見が出た。そのため、アンケートには資料の収集・整理・公開に関する悩みや問題
 についても記載してもらい、資料の所在情報・概要情報だけでなくアンケートの集計結果(非公
 開希望の状況等)も公表する方向となった。
   ・「E)調査結果の公開方法と公開範囲」:原則として、全国美術館会議のHPにて公開する
    ことを目指すが、その際の公開範囲を一般向けとするか、会員向けとするか、登録制とす
    るかといった公開範囲については、アンケート調査結果を踏まえて改めて検討すべきであ
    ろう。また、所蔵館から非公開希望があった所在情報の扱いについても、今後検討が必要
    である。
  以上の提案に対し、「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮称)」の利用対象は専門家
 を想定し、内容もそれに合わせたものとすべきだが、データそのものはオープン・アクセスにす
 ることが望ましいとの意見が出た。
   ・「F)情報の更新体制」:調査結果公開後、所蔵資料の整理状況の進展による記述内容の変
    更や、新規資料の収蔵等が想定されるため、数年おきに情報を更新するための体制作りが
    必要であるとの提案があった。
  以上の他、アンケートの回収率をあげるために、地域美術研究部会をはじめ他の部会に協力要
 請してはどうかという意見が出た。また、継続的なプロジェクトにしていくための一案として、
 全国美術館会議それ自体の機関アーカイブズを編成し、その所在情報を「美術関係アーカイブズ
 資料所在情報一覧(仮称)」に掲載するという発想もあるという意見が提出された。これに対し
 機関アーカイブズを整備している美術館、博物館は現状ではほとんどないため、さまざまな困難
 が想定されるという反論もあった。
  最後に、「美術関係アーカイブズ資料所在調査(仮称)」の実現に向けたワークフロー及びス
 ケジュールを討議し、以下の要領で進めることになった。
【2017年度~2018年度】
  ①A)~E)について検討し、特にA)~C)については仮の基準・項目を確定する。情報資料
   研究部会員の所属美術館(及び協力を得られそうな美術館)の所蔵資料について、概要記
   述を作成。作業過程を踏まえてA)~D)を再検討。基準・項目・アンケート様式を正式に
   確定する。
  ②①で作成した概要記述を元に、「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」β版
   (PDFのリンク集)を作成し、全国美術館会議のHPで仮公開する。
  ③②で作成したβ版に基づき、学芸員研修会の場で、アーカイブズ資料の所在調査の意義に
   関する啓発活動を行う(2019年3月予定)。
【2019年度】
  ④全国美術館会議総会(2019年5月予定)で、アンケート調査実施に関する告知を行う。
  ⑤アンケート様式を、送付(アンケート第1弾)。記載に当たっては、②で作成したβ版を参
   照してもらう。
  ⑥アンケート結果の回収。アンケート結果に基づき各資料群の概要記述を作成(部会員が分
   担)。作成した概要記述を所蔵館担当者に戻し、内容を確認してもらう。
【2020年度~】
  ⑦概要記述を「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」β版に統合。
  ⑧アンケート結果に基づき、「E)調査結果の公開方法と公開範囲」を再検討する。検討結果
   にしたがって「美術関係アーカイブズ資料所在情報一覧(仮)」正式版を公開。
  ⑨アンケート第1弾に協力を得られなかった館等を対象に、アンケート第2弾、第3弾を送付
   (会員館以外についても検討)。回収結果を踏まえて、「美術関係アーカイブズ資料所在
   情報一覧(仮)」正式版を更新。
  ⑩所在情報のジャパンサーチへの統合が可能かどうかについて検討。

3. 今後の企画準備に関する協議並びに情報交換
  次回の部会は事例見学会を兼ねて、東京都町田市の石橋財団アートリサーチセンターに協力
 依頼する方向で検討することになった(2018年4月中旬予定)。
(報告者:国立新美術館学芸課美術資料室 谷口英理)

参加者:8名

越智裕二郎(西宮市大谷記念美術館)部会長
鴨木年泰(東京富士美術館)幹事
川口雅子(国立西洋美術館)幹事
八柳サエ(横浜美術館)
谷口英理(国立新美術館)
住広昭子(東京国立博物館)
オブザーバー
黒澤美子(ブリヂストン美術館)
小林豊子(全国美術館会議 事務局)
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