第59回教育普及研究部会会合報告
内容
(1日目)
・部会長挨拶、幹事から趣旨説明
・大阪中之島美術館の活動紹介、質疑応答
(大阪中之島美術館主任学芸員 高柳有紀子氏)
・大阪中之島美術館へ移動、施設見学
・国立国際美術館へ移動
・国立国際美術館の活動紹介、質疑応答
(国立国際美術館主任研究員・教育普及室長 藤吉祐子氏)
・幹事からの連絡
(2日目)
・幹事から趣旨説明
・講演「学芸員研修会は、教育普及の発想と方法で!」
(横浜美術館主任エデュケーター/主任学芸員 端山聡子氏)
・質疑応答、ディスカッションに向けたメモ作成
・大阪市立自然史博物館の活動紹介、質疑応答
「友の会活動を含めた博物館の教育活動について」
(大阪市立自然史博物館学芸員 横川昌史氏)
「幼保・学校連携を含めた教育連携やワークショップ等の教育活動の評価について」
(大阪市立自然史博物館総務係長 釋 知恵子氏)
「博物館の使命と教育活動、コミュニケーション活動について」
(大阪市立自然史博物館学芸課長 佐久間大輔氏)
・学芸員研修会企画準備に向けたグループ・ディスカッション
・グループごとに発表して全体共有
・幹事からの連絡、部会長挨拶
令和4年度第2回・通算第59回の教育普及研究部会会合では、設置主体や運営方式が異なる大阪の3つのミュージアムの教育活動を、各館の担当者より紹介いただいた。また、来たる令和 5年度に教育普及研究部会が企画を担当する「全国美術館会議第38回学芸員研修会」についての部会員間の意見交換を行った。
会合1日目は国立国際美術館に集合し、まずは大阪中之島美術館の教育普及事業について、同館の高柳有紀子氏よりお話しいただいた。2022年に開館した同館は、運営にPFIコンセッション方式を導入したことでも注目されている。教育活動においては「“共育する”美術館」をテーマに、外部の様々な専門機関・団体と連携して、子どものためのラーニングプログラム「ナッカ・キッズ」などを実施している。高柳氏は、館内の人手不足という切実な課題がある一方で、外部団体との協働が「美術館のラーニングの当事者を館外にも」増やすことにつながると話し、館の職員の役割はその当事者たちが安全に活動しやすい環境を整えることだとした。また、次年度に開催を計画している他機関とのコラボプログラムも紹介された。高柳氏による活動紹介の後は、大阪中之島美術館へ移動して、ワークショップルームなどの施設を見学した。
見学後は再び国立国際美術館へと戻り、同館の藤吉祐子氏より、教育普及プログラムの事例紹介を織り交ぜつつ、プログラム作成時に大切にしていることや教育活動の根幹となる理念についてお話しいただいた。2004年に移転して新館がオープンした国立国際美術館では、現代美術の振興という活動方針のもと、「だれのために・何のためになのか徹底的に考える」、「現代美術に対してバリアを感じさせず、親しんでもらう」、「継続すること」などを大切にしながら教育普及プログラム作りをしている。藤吉氏は、活動のベースは「観察と対話」であるとし、まさに“徹底的に考え”たうえで丁寧に作られた学校受入のプロセスや、『アクティビティ・ブック』、ワークショップ、「びじゅつあー」などのプログラム事例が紹介された。活動を継続することの難しさを日頃から実感している会合参加者にとって、プログラム作りの過程だけでなく、担当者としての姿勢も参考となる活動紹介となった。
会合2日目は大阪市立自然史博物館へ場所を移して開催した。午前中は、横浜美術館の端山聡子氏によるレクチャーを行い、これまで教育普及研究部会が担当してきた学芸員研修会のテーマを振り返りながら、美術館の教育普及活動を行ううえでの基本的な考え方に関してお話しいただいた。引き続き、端山氏の進行により学芸員研修会を各自で考案するワークショップを行い、午前の部は終了となった。
午後は、大阪市立自然史博物館のミッションと、それをどのように職員が理解・共有して各部門での活動へと結実させているのか、同館の佐久間大輔氏、釋知恵子氏、横川昌史氏から活動紹介とあわせてお話しいただいた。横川氏からは、70年の歴史を持つ「友の会」の話を中心に、市民が主体的に関わって展開されている教育活動について具体的な数値も挙げながら紹介いただいた。続いて釋氏から、コロナ禍前の2019年には年間500校を超える利用があったという学校との連携に関して、教材の紹介のほか、「評価」のための取り組みを説明いただいた。最後に、佐久間氏より、博物館のミッションと評価活動についてお話しいただいた。大阪市立自然史博物館の沿革とステークホルダーは誰なのかという前提を確認したうえで、佐久間氏はミッションや倫理規定、評価活動はステークホルダーとのコミュニケーションであり、ミッションは「評価」のためにも重要であるとした。同館では、今の活動に合わせたミッションの再検討も重ねられている。スタッフがミッションを自覚したうえで利用者と対話して日々の活動を設計し、さらには日々の活動の振り返りが次のミッションの見直しにつながるというその循環が、活動理念の共有と継承の背景にあることが、三氏の発表によって示された。
会合の最後には、午前中のワークショップで書き出したキーワードを持ち寄り、学芸員研修会で取り上げるべきテーマについてグループ・ディスカッションを行った。3館の活動紹介と端山氏のレクチャーを足掛かりに、参加者各自が教育普及を担当する学芸員としての現在地や姿勢をふり返りつつ、活発に意見が交わされた。
・部会長挨拶、幹事から趣旨説明
・大阪中之島美術館の活動紹介、質疑応答
(大阪中之島美術館主任学芸員 高柳有紀子氏)
・大阪中之島美術館へ移動、施設見学
・国立国際美術館へ移動
・国立国際美術館の活動紹介、質疑応答
(国立国際美術館主任研究員・教育普及室長 藤吉祐子氏)
・幹事からの連絡
(2日目)
・幹事から趣旨説明
・講演「学芸員研修会は、教育普及の発想と方法で!」
(横浜美術館主任エデュケーター/主任学芸員 端山聡子氏)
・質疑応答、ディスカッションに向けたメモ作成
・大阪市立自然史博物館の活動紹介、質疑応答
「友の会活動を含めた博物館の教育活動について」
(大阪市立自然史博物館学芸員 横川昌史氏)
「幼保・学校連携を含めた教育連携やワークショップ等の教育活動の評価について」
(大阪市立自然史博物館総務係長 釋 知恵子氏)
「博物館の使命と教育活動、コミュニケーション活動について」
(大阪市立自然史博物館学芸課長 佐久間大輔氏)
・学芸員研修会企画準備に向けたグループ・ディスカッション
・グループごとに発表して全体共有
・幹事からの連絡、部会長挨拶
令和4年度第2回・通算第59回の教育普及研究部会会合では、設置主体や運営方式が異なる大阪の3つのミュージアムの教育活動を、各館の担当者より紹介いただいた。また、来たる令和 5年度に教育普及研究部会が企画を担当する「全国美術館会議第38回学芸員研修会」についての部会員間の意見交換を行った。
会合1日目は国立国際美術館に集合し、まずは大阪中之島美術館の教育普及事業について、同館の高柳有紀子氏よりお話しいただいた。2022年に開館した同館は、運営にPFIコンセッション方式を導入したことでも注目されている。教育活動においては「“共育する”美術館」をテーマに、外部の様々な専門機関・団体と連携して、子どものためのラーニングプログラム「ナッカ・キッズ」などを実施している。高柳氏は、館内の人手不足という切実な課題がある一方で、外部団体との協働が「美術館のラーニングの当事者を館外にも」増やすことにつながると話し、館の職員の役割はその当事者たちが安全に活動しやすい環境を整えることだとした。また、次年度に開催を計画している他機関とのコラボプログラムも紹介された。高柳氏による活動紹介の後は、大阪中之島美術館へ移動して、ワークショップルームなどの施設を見学した。
見学後は再び国立国際美術館へと戻り、同館の藤吉祐子氏より、教育普及プログラムの事例紹介を織り交ぜつつ、プログラム作成時に大切にしていることや教育活動の根幹となる理念についてお話しいただいた。2004年に移転して新館がオープンした国立国際美術館では、現代美術の振興という活動方針のもと、「だれのために・何のためになのか徹底的に考える」、「現代美術に対してバリアを感じさせず、親しんでもらう」、「継続すること」などを大切にしながら教育普及プログラム作りをしている。藤吉氏は、活動のベースは「観察と対話」であるとし、まさに“徹底的に考え”たうえで丁寧に作られた学校受入のプロセスや、『アクティビティ・ブック』、ワークショップ、「びじゅつあー」などのプログラム事例が紹介された。活動を継続することの難しさを日頃から実感している会合参加者にとって、プログラム作りの過程だけでなく、担当者としての姿勢も参考となる活動紹介となった。
会合2日目は大阪市立自然史博物館へ場所を移して開催した。午前中は、横浜美術館の端山聡子氏によるレクチャーを行い、これまで教育普及研究部会が担当してきた学芸員研修会のテーマを振り返りながら、美術館の教育普及活動を行ううえでの基本的な考え方に関してお話しいただいた。引き続き、端山氏の進行により学芸員研修会を各自で考案するワークショップを行い、午前の部は終了となった。
午後は、大阪市立自然史博物館のミッションと、それをどのように職員が理解・共有して各部門での活動へと結実させているのか、同館の佐久間大輔氏、釋知恵子氏、横川昌史氏から活動紹介とあわせてお話しいただいた。横川氏からは、70年の歴史を持つ「友の会」の話を中心に、市民が主体的に関わって展開されている教育活動について具体的な数値も挙げながら紹介いただいた。続いて釋氏から、コロナ禍前の2019年には年間500校を超える利用があったという学校との連携に関して、教材の紹介のほか、「評価」のための取り組みを説明いただいた。最後に、佐久間氏より、博物館のミッションと評価活動についてお話しいただいた。大阪市立自然史博物館の沿革とステークホルダーは誰なのかという前提を確認したうえで、佐久間氏はミッションや倫理規定、評価活動はステークホルダーとのコミュニケーションであり、ミッションは「評価」のためにも重要であるとした。同館では、今の活動に合わせたミッションの再検討も重ねられている。スタッフがミッションを自覚したうえで利用者と対話して日々の活動を設計し、さらには日々の活動の振り返りが次のミッションの見直しにつながるというその循環が、活動理念の共有と継承の背景にあることが、三氏の発表によって示された。
会合の最後には、午前中のワークショップで書き出したキーワードを持ち寄り、学芸員研修会で取り上げるべきテーマについてグループ・ディスカッションを行った。3館の活動紹介と端山氏のレクチャーを足掛かりに、参加者各自が教育普及を担当する学芸員としての現在地や姿勢をふり返りつつ、活発に意見が交わされた。
(報告者:教育普及研究部会幹事/国立新美術館 吉澤菜摘)
出席者:57名
部会員56名、事務局1名