美術館と美術市場との関係について(声明)を、臨時理事会の承認を経て、発表します。

2018年6月19日


                                            全国美術館会議

会長 建 畠 晢


美術館と美術市場との関係について

(声明)


 本年4月17日、未来投資会議構造改革徹底推進会合「地域経済・インフラ」(中小企業・観光・スポーツ・文化等)第4回会合に、文化庁より「アート市場の活性化に向けて」と題した資料が提出された。また、これに関連して、『読売新聞』5月19日付夕刊に、美術市場の活性化と美術館・博物館との関係に言及した記事「アート市場育む『先進美術館』」が掲載された。
 国内の国公私立美術館389館が加盟する全国美術館会議は、こうした昨今の状況に対し、2017年の総会で議決された『美術館の原則と美術館関係者の行動指針』に基づき、美術館と美術市場との関係について以下のとおり基本的な見解を表明する。

 美術館はすべての人々に開かれた非営利の社会教育機関である。美術館における作品収集や展覧会などの活動が、結果として美術市場に影響を及ぼすことがありうるとしても、美術館が自ら直接的に市場への関与を目的とした活動を行うべきではない。
 美術館による作品収集活動はそれぞれの館が自らの使命として掲げた収集方針に基づいて体系的に行われるべきものである。美術作品を良好な状態で保持、公開し、次世代へと伝えることが美術館に課せられた本来的な役割であり、収集に当たっては投資的な目的とは明確な一線を画さなければならない。
 なお、収集活動は購入ばかりではなく寄贈も大きな比重を占めている。将来にわたって美術館が信頼すべき寄贈先と見なされるためにも、この基本方針は重要な意味を持つものである。


 この声明は、『美術館の原則と美術館関係者の行動指針』のうち、以下のコレクション形成・保存に関する原則6と行動指針6に基づくものである。

 美術館の原則 6  
  美術館は、体系的にコレクションを形成し、良好な状態で保存して次世代に引き継ぐ。
 美術館関係者の行動指針 6: 収集・保存の責務
  美術館に携わる者は、作品・資料を過去から現在、未来へ橋渡しすることを社会から託された責務として自覚
  し、収集・保存に取り組む。美術館の定める方針や計画に従い、正当な手続きによって、体系的にコレクショ
  ンを形成する。

※『美術館の原則と美術館関係者の行動指針』は、全国美術館会議2017年度総会決議により策定された。これは
 「博物館法」(1951年制定・2014年改正)、「博物館の設置及び運営上の望ましい基準」(2011年告示)、
 「ICOM(国際博物館会議)職業倫理規程」(2004年改訂)、「博物館の原則 博物館関係者の行動規範」(日
 本博物館協会 2012年)を踏まえ、日本の美術館関係者が共有する文書として作成されたものである。
「美術館の原則と美術館関係者の行動指針」
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