教育普及研究部会過去の活動

日時
2019年11月20日(水)
場所
国立新美術館 3階講堂

第52回教育普及研究部会会合報告

 教育普及研究部会では幹事の交代があり、
今年度より中村貴絵(横須賀美術館)と吉澤菜摘(国立新美術館)が幹事を務める。新体制となった令和元年度第1回の会合は、11月20日に国立新美術館で開催された。
 部会員とオブザーバーあわせて64名が参加した会合では、講師に京都造形芸術大学教授の福のり子氏をお招きし、「対話型鑑賞の過去・現在・そしてこれから」と題してご講演いただいた。参加者が対話をしながら作品を鑑賞する対話型鑑賞は、ニューヨーク近代美術館で開発されたVTC(Visual Thinking Curriculum)が日本の美術館関係者に紹介されたことを契機に、90年代後半から日本国内で急速に普及した。今日では学校や一般来館者向けの鑑賞教育プログラムとして多くの美術館で実践され、また、各館の活動方針や事情に合わせて担当者の創意工夫が加えられて、多様な展開を見せている。事前に部会員とオブザーバーを対象に行ったアンケート調査でも、対話型鑑賞を取り入れたプログラムを「行っている」・「過去に行っていた」という回答が全68件のうち57件にのぼった。講演では、日本に対話型鑑賞を先駆的に広めた福氏によって、対話型鑑賞が日本に上陸した経緯や、対話しながら見ることで鑑賞者に起こる変化、京都造形芸術大学で実施されているACOP(アート・コミュニケーション・プロジェクト)などが紹介され、美術作品を見るという行為において言語化することがいかに重要であるかが力強く語られた。
 講演に続いて、参加者を10グループに分け、「『鑑賞』とは何か、美術館とはどんな場所か」、「美術館で鑑賞活動を行う目的と効果」、「鑑賞に関する疑問・悩み・期待、何でもトーク」のテーマについてディスカッションを行った。美術館で鑑賞することの意義といった本質的な問いから、話し声に関するクレーム対策など具体的な事案まで、各グループで活発に意見が交わされた。
 今回の会合では、各館で行われている対話型鑑賞の現状を部会内で共有し、対話を取り入れる目的や効果に関する議論の端緒を開くことができた。今後も活発な意見交換を行い、部会内での議論を深めていきたい。
次回の会合は、2020年2月20日、21日に福岡市美術館で開催する予定である。同館の休館期間中に行われたアウトリーチ活動の報告を中心に、教育普及プログラムの最近の動向に関する情報交換を行いたいと考えている。
(報告者:国立新美術館 吉澤菜摘)

出席者:64名

部会員40名
オブザーバー24名

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