保存研究部会過去の活動

日時
2017年11月16日(木) ~2017年11月17日(金)
場所
国立西洋美術館 第一会議室

第49回保存研究部会会合報告

内 容

11月16日(木)
14:00 村田眞宏部会長による開会挨拶
14:00~16:15 講演及び意見交換
  「輸送箱(クレート)の仕様について」(高嶋美穂氏/国立西洋美術館)
  国立西洋美術館で保存管理をご担当されている高嶋美穂さんから、西洋美術館で使用している
 輸送箱の構造や実際の使用例について、詳しくご紹介いただきました。なかでも、データロガー
 による輸送時の温湿度変化の記録と、それらの
 記録から国内輸送では湿度変動、海外輸送では
 温湿度両方の変動(特に夏季・冬季)の緩和が
 重要であるとするご指摘は、限られた予算で輸
 送や梱包を行う場合にもひとつの指針となるお
 話でした。
  講演後の意見交換では、各館が実践している
 輸送時の工夫や温湿度コントロール方法として
 板ダンボールやエアキャップの目張りをしっか
 りする、絵具の弱い作品は板ダンの厚みを倍に
 する、狭い場所で慎重に取り扱ってもらえるよ
 うに塗装を膨張色にしてクレートを大きく見せる、油彩(キャンバス)に裏板をつける、デコレ
 ーション額をシンプルな額に入れ替える、冬季に個人宅から作品を移送するときはトラックの空
 調を徐々に入れるようにする、冬季の作品返却時は収蔵庫で開梱せず温度の低い荷解室等で開梱
 点検をする、等々の事例が紹介されました。また、クレートの再利用や収蔵庫内での活用につい
 ての話題もありました。
17:15~18:30 バックヤードツアー
  邊牟木さん、高嶋さんのご案内で、物理研究
 室室、科学研究室、絵画修復室、彫刻修復室を
 見学させていただきました。絵画修復室では2年
 後に予定されている展覧会に向けた大型油彩画
 の修復が進行中であり、修復作業ご担当の眞鍋
 千絵さん、青木紀子さんも交えて作品の状態や
 作業経緯について解説いただきました。
19:00~ 「上野 寄せ家」にて情報交換会。
11月17日(金)
9:30~11:30 講演及び意見交換
  「特別展時の展示ケース内に使用する材質について」(古田嶋智子氏/東京文化財研究所)
  保存科学がご専門の古田嶋智子さんに、展示ケースで使用する材料から放散される有害化学物
 質の種類や性質についてお話いただきました。
  ケース内の化学物質を低減する具体策(①換
 気、②清浄空気下での材料の枯らし、③展示床
 面の遮蔽(合板が露出している裏面にアルミシ
 ートを貼る)、④化学物質吸着剤の使用)の解
 説は大変参考になり、講演後の質疑もこれらの
 点に集中しました。
  また、意見交換を通じて、ケース内の空気環
 境問題は、仮設の場合だけでなく、長期間使い
 まわす備品のエアタイトケースでも発生してい
 る例が少なくないことがわかりました。こうし
 た状況から、エアタイトに固執しつづける是非を問う声や、展示室の環境を改善して開放型ケー
 スを採用する方が相対的に安全な場合もあり得るのではという意見も寄せられました。
11:30~12:20 超高感度煙検知システムについて(プレゼン及びデモ)
  ホーチキ株式会社(全美賛助会員)の松田昭浩氏と上谷哲氏に、「超高感度煙検知システム」
 の製品説明とサンプル機器を用いたデモを行っていただきました。
12:20~12:50 連絡事項等
  ・学芸員研修会後に全美HPにアップしたコンディション・レポート試行版について、現在ま
   でにクレームや修正のご指摘等は特に寄せられていません。
  ・研修会報告書は現在原稿がほぼ揃い、出演者に掲載不可画像の確認を行ってもらっていま
   す。編集作業は研修会対策チームが中心となって進め、年度内中に発行の予定です。
  ・次回会合は2月に長崎県美術館で開催します(企画幹事・森園さん)。テーマはIPMまたは
   洋紙の修復(どちらかまたは両方)を予定しています。 ※会合後の幹事間協議でIPMをテ
   ーマとすることになりました。
  ・平成28年度の収支報告を行いました。
(報告者 岩手県立美術館 根本亮子)
 

出席者

16日:14名、オブザーバー7名
17日:13名、オブザーバー5名、賛助会員2名

 
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